研究課題
挑戦的研究(萌芽)
本研究の目的は、マウス精巣における精子幹細胞の遊走現象の役割を理解することである。精子幹細胞に関する知見は、基礎的な雄繁殖能の理解に留まらず、産業・実験動物でしばしば問題となる雄低妊孕化の原因究明とその対処に必要不可欠である。しかし生体内での幹細胞挙動の知見は乏しく、研究は十分に進んでいない。近年申請者は、精子幹細胞がダイナミックに動くことを見出し、精子幹細胞はなぜ動くのか?という新しい疑問が生じた。本研究では、細胞遊走の人為的阻害を試み、精子形成における幹細胞遊走の役割を検証する。
本研究では、マウス精子幹細胞が精巣内の基底膜上を活発に遊走する現象の生理的役割を解明するため、精子幹細胞における遺伝子の発現・機能解析を行った。その結果、マウス精子幹細胞がランダムに動きながら自らの足場となる基底膜タンパク質を分泌する現象を見出し、動きが精子形成の場の構造維持に関与している可能性が考えられた。今後、同タンパク質の分泌阻害や動きを止めた場合に生じる影響を検討することで、精子幹細胞の動きの役割の一端が解明されることが期待される。
精子幹細胞の遊走は、精子産生の維持そして組織傷害後の再生に寄与する重要現象だが、そのメカニズムは殆ど謎に包まれている。本研究によって幹細胞が遊走しながら足場となる基底膜の維持に関与する可能性が示され、遊走現象の生理的役割の一端が明らかになった。以上の基礎的知見は、産業動物、野生動物、ヒトの造精機能の制御や造精機能障害の原因究明の応用研究に発展する可能性を持つ成果である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
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