研究課題
挑戦的研究(萌芽)
細胞は機能を発揮する遺伝子の組み合わせを変化させて様々に変化する。遺伝子発現を制御しているのは複雑な分子複合体であるが、中でもスーパーエンハンサーは、染色体上に遺伝子転写因子・転写制御因子が高密度に集積した構造であり、集団的な遺伝子発現制御を行うことによって、細胞運命決定等において主要な役割を果たす領域であるとして提唱されているが、その実体は明らかでなく機能についても依然として多くの議論がある。スーパーエンハンサー研究のほとんどは細胞を破壊して取り出した遺伝子解析手法による。本研究では生きた細胞内でスーパーエンハンサーの実体を直視し、同一細胞での遺伝子発現と直接関連づける。
スーパーエンハンサー(SE)は、集団的な遺伝子発現制御において主要な役割を果たす領域であるとされているが実体は明らかでない。本研究では免疫B細胞の分化過程でNF-kBが核内に作る集積点をSEの実体と予想し、その形成と遺伝子発現との関わりを研究した。NF-kBの核内集積点が、BRD4蛋白質と共局在し、液-液相分離構造的性格を持つ転写開始点である可能性を明らかにし、さらに遺伝子発現との関係を詳細に解析した。NF-kB下流には共同性や発現ゆらぎの大きい遺伝子転写が見られ、中でもCD83遺伝子の転写はNF-kB集積と相関して変動し、SE形成によって制御されていることを示唆する結果が得られた。
生物の基本単位である細胞が、全体性・一貫性を保って環境に応答し変化して行くには、多くの遺伝子発現が協調して制御されることが必須であると考えられるが、その仕組みは不明な点が多い。我々は、免疫B細胞由来の培養細胞の細胞成熟過程で、NF-kBという代表的転写制御蛋白質が、核内に多数の集積点を作ることを発見した。この構造の性質と遺伝子発現の関係を研究し、CD83を含む特定の遺伝子群の協調的制御の様子から、それがスーパーエンハンサーと呼ばれる協調的遺伝子発現制御構造の一つである可能性を明らかにした。
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PLoS Genetics
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Methods Mol. Biol.
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