研究課題/領域番号 |
19K22423
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分44:細胞レベルから個体レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大澤 志津江 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (80515065)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2020年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2020年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2019年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 組織成長 / 細胞間相互作用 / 成長遅延 / ショウジョウバエ / 発生時間軸 |
研究開始時の研究の概要 |
多細胞生物の個体発生は、時間軸に沿った精密かつ計画的な形作りのプロセスである。種々の内的・外的撹乱により、個体発生の時間軸に歪みが生じた際、その歪みを補正する頑健な仕組みが存在すると考えられるが、その実体は不明である。当研究室は最近、幼虫期のショウジョウバエが内的・外的撹乱によって成長遅延を起こした際に、その遅延(時間軸の歪み)を補正する細胞集団挙動「細胞ターンオーバー(細胞死と細胞増殖による細胞の入れ替え)」が翅原基で誘発されることを見いだした。本研究では、RNA-seqや遺伝学的スクリーニングを起点とした遺伝学的解析を行い、この未知の細胞集団挙動の分子基盤とその役割を明らかにする。
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研究成果の概要 |
発生中の生体が様々な撹乱に対処する過程で、発生プロセスに遅れが生じることがある。しかしながら、個体の発生遅延を補正して正常な組織形成を行う仕組みはいまだ不明である。我々は、幼虫期に顕著な発生遅延を示すショウジョウバエMinute変異体を起点とした解析を行なった結果、ショウジョウバエ幼虫が成長遅延を起こした際に、その遅延を補正する細胞集団挙動「細胞ターンオーバー」が翅原基で誘発されること、およびこの細胞ターンオーバーが成虫翅の表現型を制約する上で重要な役割を果たしていることを明らかにした(Akai, Ohsawa et al, PLoS Genetics, 2021)。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究成果は、「細胞集団挙動を介した発生時間軸制御」という、多細胞コミュニティが内包する新しい動的恒常性維持機構の存在を示唆するものであり、発生生物学や、表現型制約の仕組みを解析する進化生物学の発展に大きく貢献し得ると期待される。また興味深いことに、今回モデルとして用いたMinute変異体と同様のリボソームタンパク質遺伝子のヘテロ変異が様々なヒトの疾患(リボソーム病と総称される)を引き起こすことが知られている。今後、分子基盤を明らかにすることで、いまだ大きな謎であるリボソーム病の発症機序の解明とその新たな治療戦略の基盤構築に将来的にはつながり得ると考えられる。
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