研究課題/領域番号 |
19K22462
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分45:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
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研究機関 | 神戸大学 (2020-2022) 総合地球環境学研究所 (2019) |
研究代表者 |
奥田 昇 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 教授 (30380281)
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研究分担者 |
上原 佳敏 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (10759442)
小北 智之 九州大学, 農学研究院, 教授 (60372835)
大久保 卓也 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (60280814)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2021年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 産卵回遊 / 母田回帰 / 嗅覚記憶 / 階層的ナビゲーション仮説 / 耳石 / ストロンチウム安定同位体 / RNAseq / ニゴロブナ / 遺伝子発現解析 / エコゲノミクス |
研究開始時の研究の概要 |
回遊は多様な分類群で進化した行動形質である。回遊生物には、繁殖のために出生地へ回帰する種がいる。この産卵回帰の生理学的機構は幾つかの種で報告されているものの、その遺伝学的背景はよく分かっていない。本研究は、琵琶湖の固有種ニゴロブナで明らかとなった母田回帰習性のメカニズムを理解するために、個体の産卵回遊履歴を推定する手法を開発するとともに、母田回帰を司る生理的メカニズムを実験的に検証する。さらに、嗅覚に関連した遺伝子の発現パタンを調べることにより、母田回帰を可能にする嗅覚記憶の分子生態学的基盤を解明する。
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研究成果の概要 |
沖合回遊性の琵琶湖固有種ニゴロブナは出生水田に産卵回遊する。この母田回帰メカニズムとして嗅覚記憶仮説を実験的に検証するために、水田生育稚魚を成長・成熟させ、様々な匂い物質に曝露したところ、出生水田や同種・同胞個体の匂いを選好した。匂いの提示順序で選好性が変化することから、複数の環境情報を手がかりに階層的にナビゲーションすることが示唆された。続いて、出生期の嗅覚刷り込みと産卵遡上期の嗅覚想起に関与する遺伝子を探索するために、ニゴロブナおよび非回遊性近縁種ギンブナの稚魚・成魚の脳・嗅覚神経系組織の遺伝子発現パタンを比較した結果、ニゴロブナで嗅覚受容体や嗅覚神経系の発生に関与する遺伝子が高発現した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
サケ科魚類は大海から母川回帰するために、嗅覚記憶に基づいて複数の環境情報を手がかりに出生地まで階層的にナビゲーションすることが知られている。本研究は、サケ科魚類とは独立に進化したコイ科魚類が類似の産卵回帰メカニズムを有することを実証した。また、同科のモデル生物であるゼブラフィッシュや回遊性サケ科魚類で報告される嗅覚記憶に関連した遺伝子がニゴロブナの嗅覚・脳神経組織でも高発現することを明らかにした。さらに、耳石ストロンチウム安定同位体分析を用いて、地域集団の母田回帰率を調べる手法を確立した。一連の研究成果は、絶滅が危惧される本魚の保全活動を促進し、活動が回帰率に及ぼす効果を検証するのに役立つ。
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