研究課題
挑戦的研究(萌芽)
これまでに多数のNO標的タンパク質およびその修飾部位の同定に成功してきた.この情報を利用して,NO修飾システイン残基近傍に作用して,酸化のみを特異的に阻止する化合物の単離をin silicoスクリーニングから試みたところ,世界で初めての分子特異的酸化抑制化合物の単離に成功した(特許出願済).そこで,本研究では,パーキンソン病発症に深く関わる小胞体ストレスセンサーIREαのS-ニトロシル化を特異的に抑制する新規シーズの単離を目指す.加えて,その抗パーキンソン病効果を細胞レベルとモデル動物を用いて検証し,薬理学的に分類のない新カテゴリー(酸化修飾部位阻止薬)に属するシーズの創製にチャレンジする.
一酸化窒素(NO)はUPRのセンサー分子であるIRE1αをS-ニトロシル化して不活性する.NOによる阻害は細胞を脆弱にすることをから,IRE1αのエンドヌクレアーゼ活性を阻害することなく,酸化修飾のみを特異的に抑制する化合物はNO修飾に起因するUPR機能消失依存的な疾患に有効である可能性がある.そこで,薬理学的にも新たなカテゴリーに属する分子特異的酸化修飾部位阻止薬を単離することにチャレンジし,候補リード化合物の作出に成功した.特異性を高めるために,2種の誘導体も作出し,その阻害効果を確認した.これらは,NOによるUPR経路の遮断を濃度依存的に回復させることがわかった.
パーキンソン病や糖尿病の発症には小胞体ストレスが介在していることが明らかとなっている.一方で,一酸化窒素はセンサータンパク質であるIRE1に結合することで,本来は抗細胞死に関わる経路を遮断することでより脆弱にさせることを証明してきた.そこで,この経路を回復させるような化合物の作出は病態発症を軽減する可能性があると考えた.スクリーニングから有力な候補化合物を単離することに成功した.これらは酵素活性を阻害することなく,NOによる修飾のみを抑制することがわかった.今後,動物モデルに適用してその効力を検討することで,新規作用メカニズムを有した治療薬開発に有益な情報をもたらすと推定される.
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