研究課題
挑戦的研究(萌芽)
がん細胞では特定の遺伝子領域が増える遺伝子増幅という現象が知られている。正常なゲノムでも遺伝子のコピー数の変異(CNV)が12000程度が知られており、CNVは遺伝子多型の一種と考えられるが、悪性腫瘍での異常なコピー数の増加は正常細胞ではみられず監視機構の存在が想像される。我々が単離した抗がん剤ゲムシタビン(GEM)耐性細胞では特定の遺伝子が増幅して耐性化している。BHLHE41をこの細胞に発現させるとRRM1のコピー数が減少して、GEM耐性が減弱した。増幅ゲノムに結合する分子群とBHLHE41で誘導される分子群について調べて遺伝子のコピー数を制限する分子機構について解明する。
遺伝子増幅はがん細胞でゲノム遺伝子のコピー数が高度に増加する異常である。我々はBHLHE41の発現が複数の薬剤耐性細胞での原因分子の遺伝子増幅を抑制することを見出している。BHLHE41によるRRM1遺伝子のコピー数減少を最新機器での全ゲノムの配列解析とゲノム立体構造の変化の解析を行った。一方、手術切除肺がん組織の検討からBHLHE41タンパク質は非浸潤型がん細胞でのみ発現し、肺腺癌では予後良好と関連した。BHLHE41の肺腺がん細胞での発現はアポトーシス誘導分子BAXの発現を抑制し、オートファジー細胞死を誘導し、また、がん遺伝子MYC誘導性の複数の遺伝子の発現を抑制することが判明した。
遺伝子増幅は発がんや薬剤耐性の原因であるが、その発生機構は不明である。BHLHE41の発現が遺伝子増幅の程度を減少させることから、BHLHE41の機能を知ることでゲノムの恒常性維持の機構への理解が深まり、増幅遺伝子を減少させる新たな癌治療の可能性が開かれる。肺がん細胞での検討からはBHLHE41の発現は肺がん細胞にオートファジー細胞死を誘導して抗腫瘍作用を持つと考えられる。現在がん遺伝子MYCを標的とするがん治療は確立していないが、BHLHE41はMYCが誘導する遺伝子を発現を抑制するので、BHLHE41の研究はMYCの抑制を介した治療の発展に端緒となることが期待される。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 5件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (8件)
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