研究課題
挑戦的研究(萌芽)
サイトカイン 「Thrombopoietin (TPO)」は造血幹細胞の増殖・維持・分化を司ることが知られているが、どのようにこれらの機能が制御されているかは未だに不明である。本研究ではTPOシグナルが“エネルギー代謝制御”によって、自己複製分裂誘導用にチューニングされるという仮説のもと、TPOが機能を使い分ける機構を明らかにする共に、未だ確立されていない ex vivo における造血幹細胞の維持・増幅の実現を目指す。
本研究では、造血幹細胞の増殖・維持・分化を司るサイトカイン 「Thrombopoietin (TPO)」の機能において、栄養状態がTPOの分化誘導効果において、重要な役割を果たすことが明らかになった。また、造血幹細胞はクロマチンアクセシビリティを変化させることで、TPOの応答性を制御していた。加えて、TPOの分化誘導に関しては上記のクロマチンアクセシビリティの変化に加え、Aclyに依存したヒストンアセチル化の活性化が必要であることも見出した。さらに、低栄養条+Acly抑制条件下で、造血幹細胞を培養すると、特に分裂が早い分画において、TPOによる分化誘導が抑制され、幹細胞性を維持された。
本研究の結果は、造血幹細胞における「Thrombopoietin (TPO)」の相反する効果が制御されるメカニズムの一端を明らかにした。さらに、幹細胞研究において、「自己複製・分化誘導の選択機構」の解明は古くからの大きな問いであり、本研究の成果は、TPO刺激をモデルとして、その機構の解明に寄与したと考えられる。さらに、TPO刺激と代謝制御が試験管内での造血幹細胞維持に寄与することも見出した。従って、本研究の成果は「造血幹細胞の増幅・維持が可能な培養条件」の開発に寄与すると考えられ、将来的には、骨髄移植療法の質・安全・適応の拡大や、造血幹細胞を用いた遺伝子療法にも大きく貢献すると考えられる。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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