研究課題
挑戦的研究(萌芽)
「母体状態・薬剤が胎生期器官の細胞周期に及ぼす影響:子宮内ライブ評価系の構築」は,器官形成期に,ヒト胎児の種々の組織内で進行する細胞周期に対して母体の全身状態の急性変化や薬剤がどのような影響を及ぼしうるかに関して,産婦人科学はもとより,幅広い医学領域にとって有用となる全く新しい知見を得ることをめざし,マウスを用いた鋭敏な評価系を開発する.
子宮内の胎生13-14日目マウス胎仔を対象として深部への観察力に優れることで知られる二光子顕微鏡を用いたライブ観察を行った.特定の細胞あるいは全ての細胞が光るようなトランスジェニックマウスを用いて,母マウスを麻酔後に開腹し子宮を露出し,手製の支持体などを用いて,二光子顕微鏡の対物レンズを接触させ,胎仔の大脳原基の中の神経幹細胞が分裂する様子をライブで観察することができた.分裂の前後に随伴する核・細胞体と呼ばれる部分の運動性も観察された.本研究は,母体の全身状況および母胎連関が胎内の器官形成にどう影響を及ぼすか理解を深める上で有用な方法論を示した.
子宮内で育つ胎児の器官において発生中の組織が正しく成長するのに不可欠な細胞産生(細胞分裂)に関しては,これまで,間接的な方法(核酸アナログ物質の投与からの追跡)を通じて把握されるのみであった.これでは,母体の変調がどう子宮内胎児の器官形成の場における細胞産生に即座の影響を及ぼしうるかというような,鋭敏な(時間分解能に優れた)把握をすることは不可能であった.本研究が目指し,一定の達成を果たした「子宮内のマウス胎仔の脳原基における細胞産生」の「直接,ライブでの観察」は,今後,高血圧,糖尿病などの疾患,薬剤の影響などをリアルタイムで調べていく取り組みの基盤となり得る.
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