研究課題
挑戦的研究(萌芽)
我々のこれまでの研究ではIgG4 の過剰産生には特異なT 細胞とそれらが産生するサイトカインが関与していることを明らかにしており、それらの疾患関連分子をマーカーとして検索することは病因・病態の本質により迫ることになり、特異的で精度が高い新たな診断法の開発に繋がると期待できる。本研究では、非侵襲性で繰り返して実施できることも検査の重要な要件であると考え、最も罹患頻度が高いのが唾液腺であること、さらには唾液腺内で産生される可溶性分子は唾液中にも検出可能であることに着目し、唾液中の可溶性マーカーを用いた新たなIgG4-RDの診断法の確立を目指す。
IgG4関連疾患(IgG4-RD)は、唾液腺を始めとした多臓器に線維化を伴った腫瘤形成とそれに伴う機能障害を来す全身性疾患であり、本邦から提唱された新しい疾患概念である。診断には「IgG4関連疾患包括的診断基準」および「臓器特異的診断基準」が用いられており、類似疾患との鑑別のために罹患臓器の生検を推奨している。しかし、唾液腺以外の臓器では生検の実施が困難であり、診断および治療方針の決定に苦慮することが少なくない。また、再発しやすいので長期に経過を診る必要があり、そのために非侵襲性で繰り返して実施できる検査が求められている。しかし、血清IgG4値のみでは、IgG4-RD以外の多くの疾患でも高値を示すことがあり、また再発時には指標とならないことが示唆されている。現在、IgG4-RDの疾患特異的自己抗原の同定については、これまでに本邦と米国から2 つの報告がある。1 つは京都大学消化器内科の研究グループがIgG4-RD の1 つである自己免疫膵炎の患者の末梢血から免疫沈降法を用いて、ラミニン511を自己抗原として同定しており(Sci Transl Med 2018)、もう1つハーバード大学のRagon研究所が末梢血からレクチンファミリーに属するガレクチン3 を自己抗原として同定している(J Allergy Clin Immunol 2019)。しかし実際には罹患臓器別で陽性率に大きなバラツキがあり、IgG4-RD に共通もしくは高率で陽性となる自己抗原は同定されていない。そこで本研究では、最も罹患頻度が高い唾液腺からそのバイオマーカーを抽出し、新たなIgG4関連疾患の診断法の確立を目指す。今年度は病変局所における疾患特異的なバイオマーカーを見いだすために、IgG4-RDの顎下腺病変および末梢血からB細胞(CD19陽性細胞)をセルソーターにてソーティングし、シングルセルBCR レパトア解析を行った。その結果、B 細胞のオリゴクローナルな増殖を認めたことから、自己抗原の存在が推察された。
2: おおむね順調に進展している
臓器特異的抗体の抽出でき、新たなバイオマーカーに繋がる可能性が高いたため
自己抗原同定の精度と信頼性を向上させるためには、さらに複数のアプローチや手法を組み合わせることが必要と考えており、次年度の研究ではさらに唾液腺病変および末梢血からPierceTM Protein Concentratorsを用いて抗体を抽出し、 HuProtTMプロテオームマイクロアレイにて自己抗原の候補分子を抽出する予定である
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