研究課題
挑戦的研究(萌芽)
我々のこれまでの研究ではIgG4 の過剰産生には特異なT 細胞とそれらが産生するサイトカインが関与していることを明らかにしており、それらの疾患関連分子をマーカーとして検索することは病因・病態の本質により迫ることになり、特異的で精度が高い新たな診断法の開発に繋がると期待できる。本研究では、非侵襲性で繰り返して実施できることも検査の重要な要件であると考え、最も罹患頻度が高いのが唾液腺であること、さらには唾液腺内で産生される可溶性分子は唾液中にも検出可能であることに着目し、唾液中の可溶性マーカーを用いた新たなIgG4-RDの診断法の確立を目指す。
今年度は以下の研究を行った。IgG4関連疾患(IgG4-RD)は、唾液腺を始めとした多臓器に線維化を伴った腫瘤形成とそれに伴う機能障害を来す全身性疾患であり、本邦から提唱された新しい疾患概念である。診断には「IgG4関連疾患包括的診断基準」および「臓器特異的診断基準」が用いられており、類似疾患との鑑別のために罹患臓器の生検を推奨している。しかし、唾液腺以外の臓器では生検の実施が困難であり、診断および治療方針の決定に苦慮することが少なくない。また、再発しやすいので長期に経過を診る必要があり、そのために非侵襲性で繰り返して実施できる検査が求められている。本研究では、非侵襲性で繰り返して実施できることも検査の重要な要件であると考え、最も罹患頻度が高いのが唾液腺であること、さらには唾液腺内で産生される可溶性分子は唾液中にも検出可能であることに着目し、唾液中の可溶性マーカーを用いた新たなIgG4関連疾患の診断法の確立を目指す。今年度は、昨年度IgG4関連疾患の唾液腺組織からゲノムエンハンサー解析を用いて抽出した疾患特異的分子のうち、SMAD3(SMAD family member 3)、RELA(RELA proto-oncogene, NF-kB subunit)、ETS1(ETS proto-oncogene 1, transcription factor)に注目し、唾液腺組織での発現についてシングル解析を行った。その結果、SMAD3は主にB細胞や肥満細胞に、RELAは免疫細胞(CD45陽性細胞)全体に、ETS1は主にT細胞に発現していた。
3: やや遅れている
コロナ禍の影響で唾液採取が困難となり、現段階では組織を用いた解析を行っている。今後も唾液を用いた診断方法の開発は困難であることが予想されるため、組織や血液を用いた診断方法を開発する予定である。
今年度の研究で抽出した疾患特異的分子のうち、特にSAMD3やETS1は、IgG4のクラススイッチや線維化に関連するB細胞やT細胞および肥満細胞などが発現しており、IgG4関連疾患のバイオマーカーとして期待できる分子であることが示唆されたため、今後はバリデーションを行い、診断能などについてAIを用いた評価を行い、最終的には診断基準に応用していく予定である。
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