研究課題
挑戦的研究(萌芽)
生体内には数多くの脂質分子種が存在し、その多様性が生体機能制御に関与することが類推されているが、その分子実体やメカニズムについては不明な点が多い。生体膜の構成成分であるホスファチジルコリン(PC)は、結合している脂肪酸の組み合わせから数多くの分子種が存在する。申請者らはこれまでに、骨格筋に含まれるPC分子種が筋線維タイプによって異なることを明らかにし、それが筋線維の特性に寄与している可能性を示唆している。本研究課題は、骨格筋の筋線維タイプによるPC分子種の相違を手がかりに、未だ解明されていない「“生体を構成する脂質の質”と生体機能の関係」を明らかにしようとする挑戦的な研究課題である。
骨格筋は収縮速度が速い速筋と、収縮速度が遅い遅筋に大別される。先行研究では、筋肉に含まれるホスファチジルコリン(PC)に結合する脂肪酸種が筋肉のタイプごとに異なることが示唆されてきたが、PC分子種の違いが生じる機序や、その生理的意義は未解明である。本研究では、速筋に16:0-PC(sn-1位に16:0が結合したPC)が多いこと、遅筋には16:0-PC加え18:0-PC(sn-1位に18:0が結合したPC)が多いこと、またLPLAT1が筋肉において18:0-PC量を増加させることを明らかにした。さらにPCに結合する脂肪酸種の変化が筋肉の性質や機能に大きく影響することが判明した。
従来の栄養学では、“摂取する脂質の量や質”と生体機能や疾病発症との関係性が重要視され、“生体を構成する脂質の質”と生体機能の関係性まで踏み込んだ解析はされてこなかったが、組織におけるPC分子種の質がその機能に重要な働きをしていることが判明し、栄養学における脂質の新たな意義を見出した。
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