研究課題/領域番号 |
19K23071
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0102:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山田 克尚 (村上克尚) 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80765579)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2020年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 津島佑子 / エコクリティシズム / 動物論 / 動物 / 環境 / 自然 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、津島佑子(1947-2016)の文学作品における自然・動物の表象に注目し、それらの発展の形態、ならびにそれを促した戦後日本の時代状況との関係について明らかにすることを目的とする。津島佑子は、1960年代後半以降、精力的に創作活動を続けた戦後女性作家である。2016年の突然の死後、再評価の機運は急速に高まっている。本研究は、自然・動物の表象が、津島の文学を初期から後期まで貫くものであることに注目し、その変遷を追うことで、津島の文学の全体像を描出し、津島の文学的営為の歴史的な位置づけを行なおうとするものである。
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研究成果の概要 |
本研究は、津島佑子の文学における自然・動物の表象に注目し、その発展の形態、ならびにそれを促した戦後日本の時代状況との関係について明らかにすることだった。「伏姫」の分析では、津島の自然・動物観の背景に、当時のフェミニズム主流派からは批判された「エコロジカル・フェミニズム」と共鳴するものがあったことを明らかにできた。「真昼へ」の分析では、長男の死を契機に、アイヌ口承文芸の方法の摂取があり、それは統一的な語り手を瓦解させ、新たに多自然主義的な語りを生み出していることを明らかにできた。これらは、津島文学の主題と技法における特異性を証明するとともに、文学研究の方法論自体に深い内省を迫るものだと言える。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究が明らかにした、津島文学と「エコロジカル・フェミニズム」の共鳴は、当時のフェミニズムが十分に評価できなかったケアに関わる問題を提起する。ケアを母性に還元することなく、自律した主体の概念を問い直す政治的ツールとして鍛え直すことは喫緊の課題であり、本研究は津島文学がそのような議論に資する可能性を持つことを示すことができた。また、統一的な語り手を持たない津島文学に固有の語りは、文学研究におけるナラトロジーの方法の全面的な刷新を促すものであり、この方向に研究を進めていくことで、主体を前提とせずに語りという現象を考察し記述する新たな方法が確立されることが期待される。
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