研究課題/領域番号 |
19K23072
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0102:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀井 一摩 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (70847467)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2020年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 朝鮮人表象 / 三・一独立運動 / 関東大震災 / 朝鮮人虐殺 / 震災後文学 / パラノイア / トラウマ / 植民地主義 / 植民地 / レイシズム / 中西伊之助 / 金子文子 / 隠蔽記憶 / 動物 / 日本文学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、韓国併合から関東大震災に至るまでの朝鮮人表象を分析し、関東大震災時における朝鮮人虐殺の背景を探ると同時に、同時期の文学との関連性を考究する。1910年の日韓併合時には、日本の新たな同胞として迎えられた朝鮮人はいかなる経緯で「不逞鮮人」という恐怖と憎悪の記号へと転換したのかという問題を、内地・外地の新聞報道を主な資料として解明する。同時に、朝鮮人を描いた同時代の文学は「不逞鮮人」言説をどのように相対化し、朝鮮人虐殺に対していかなる批判点を構築しえているのかを明らかにする。この作業を通じて、現代的問題でもある旧植民地に対するレイシズムの構造を解明し、これに対する抵抗の理論を探究する。
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研究成果の概要 |
本研究は、三・一独立運動から関東大震災にいたるまでのメディアおよび文学における朝鮮人表象を調査し、関東大震災時における朝鮮人虐殺の心理的背景となった日本人の被害妄想のメカニズムを明らかにした。また、朝鮮人虐殺を描いた文学作品を包括的に検討し、労働問題の不在という問題点を指摘した。さらに、金子文子のテクストを中心に、従来見過ごされがちであった植民地的抑圧に対する抵抗と、日本人と朝鮮人の連帯の可能性を考察した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究は、三・一独立運動から関東大震災にいたるまでの朝鮮人表象の調査を通して朝鮮人虐殺の背後にある情動の働きを解明するとともに、朝鮮人虐殺を作品化したテクストを包括的に分析・評価することで、震災後文学の問題点を照らし出すことができた。また、被抑圧者の抵抗運動や民族間の連帯に光を当てることで、従来のポストコロニアル研究が前提としてきた宗主国と植民地の間の固定的な「支配/従属」の関係を捉え直すことができた。本研究で得られた知見は、狭義の文学研究を超えて、歴史修正主義や外国人排斥などの現代の日本社会が抱えているアクチュアルな問題を再考するうえで重要な示唆を与えるものであると考える。
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