研究課題/領域番号 |
19K23074
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0102:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
籠 碧 三重大学, 人文学部, 特任講師(教育担当) (50849023)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2020年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ドイツ文学 / オーストリア文学 / シュテファン・ツヴァイク / 孤独 / 政治 / ナチス・ドイツ / 同情 / アルトゥル・シュニッツラー / 医学 / ドイツ語圏文学 / 文学と医学 / 孤独死 |
研究開始時の研究の概要 |
「孤独死」という、日本で近年社会問題となっている現象は、社会学の立場からはそれをいかに予防するか、という観点から論じられることが多い。これに対し本研究は、ドイツ語圏文学研究の立場から、文学作品における「一人で死にゆく者の心情」に焦点を当てることを通してこの現象を新たな視点で捉え直すことを目指す。「孤独死」を引き起こしていると言われる諸問題(都市化、少子高齢化など)のドイツ語圏における最も直接的な萌芽期であるモダニズムの時代は、文学の中に「死」や「孤独」のイメージが量産された時期でもあった。シュテファン・ツヴァイクとシュニッツラーを例に、「一人で死ぬ」という現象がどのように描写されているか探る。
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研究成果の概要 |
モダニズムの時代、「孤独」という現象はしばしば審美的・陶酔的に表象されてきた。しかしツヴァイク作品の「孤独」のイメージは、明らかに政治的な態度と結びつけて描き出されている。とりわけ『永遠の兄の目』の、主人公が孤独に死にゆく結末は、作者のアンガジュマンを拒絶する態度と密接な関連を持っている。これを検討することで、「孤独」という現象を、抽象的なレベルでの価値判断から切り離して、「政治的態度」という具体的な社会行為と関連づけて提示する足がかりを得た。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
孤独という現象は現在、あるときは過度に審美化され、別の時には過剰に忌避される。モダニズムの時代、ドイツ語圏文学は孤独を審美的に表象することが多かった。これに対して本研究は、ツヴァイク作品の分析や翻訳を通して、孤独という現象を、抽象的なレベルの肯定・否定の価値判断から切り離し、むしろ政治的態度と結びつける基盤を提供した。 さらに近年商業的レベルでも盛り上がりを見せるツヴァイクの文学は、政治参加に躊躇する心理を克明に写し出していることを示した。だからこそツヴァイクの文学はアクチュアリティを持ち得るのである。
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