研究課題/領域番号 |
19K23135
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0104:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
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研究機関 | 江戸川大学 |
研究代表者 |
川瀬 由高 江戸川大学, 社会学部, 講師 (60845543)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2021年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 非集団論 / 差序格局 / 非境界的世界 / 移動 / ハビトゥス / 代耕農 / 共同体なき社会 / 韻律 |
研究開始時の研究の概要 |
中国の農村地帯は現在、相次ぐ工場建設や若者の流出、高齢化の進展に起因する、農業従事者の構造変化という新たな局面を迎えている。それを端的に象徴するのが、「代耕農」、即ち外地から流入してきた農業従事者の存在である。 本研究は、「代耕農」に関する現地調査を通して、中国沿海部地域の現在を端的に象徴する「よそ者」に依存した農村の存立形態について明らかにするとともに、かれら「よそ者」らの一種の生存戦略として見なしうる頻繁かつ柔軟な移動実践を「移動のハビトゥス」と概念化し記述することにより、中国の社会的動力の一端を通時的/共時的位相において探究する。
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研究成果の概要 |
本研究は、現代中国農村の「代耕農」即ち出稼ぎ農業従事者たちを対象とし、その生存戦略としての頻繁かつ柔軟な移動実践、及びそのような実践を可能にする社会的条件の探求を目標とした。コロナ禍の影響により代耕農に関する現地調査は十分に行えなかったが、これまでの調査資料の分析および文献研究を通して、中国人社会における「よそ者」との邂逅や非共同体的な社会関係に見られる独特な身構え(ハビトゥス)をつらぬく社会的力学を考察し、さらに研究史上の伏流であった「非集団論」の系譜とその意義を明らかにした。本研究成果の一端は、単著『共同体なき社会の韻律』(弘文堂、2019年)の他、複数の論文(分担執筆等)として発表した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究は、等身大の中国人社会の姿を理解し記述するためのより適切な視点の構築を、中国農村社会の対人関係のありように注目しながら試みたものである。そこでは日本のような「共同体」は無く、ウチ/ソトの境界は状況に応じて可変的で、時には「よそ者」との協同も見られる。そのような社会生活の姿を捉えるためには、固定的な境界や成員権を前提とする発想を相対化した「非集団論」の考え方が有効であることを指摘した。 粗雑な「嫌中」論が飛び交う今日の状況を見るにつけ、残念ながらと言うべきであるが、異文化理解の倫理の醸造は重要性を増している。本研究は、日本における中国の社会文化の理解の成熟の一助を担うものと位置づけられる。
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