研究課題/領域番号 |
19K23137
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0104:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
久志本 裕子 (塩崎 裕子 / 久志本裕子) 上智大学, 総合グローバル学部, 准教授 (70834349)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | イスラーム / 排他主義 / 寛容 / 穏健 / マレーシア / インドネシア / ソーシャルメディア / オリエンタリズム / 排他性 / 東南アジア / 排外主義 / 言説 / 排他主義的言説 / 知識のイスラーム化 / 不均衡 / 権力関係 / ムスリム / ロヒンギャ / ヘイトスピーチ / 排除 / 排他的言説 / メディア / 宗教的権威 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ソーシャルメディアがどのようなメカニズムの中でムスリムの他宗教に対する排他主義的言説(あるいはそれに対抗する寛容性の言説)の生成と普及を促すのか、を主な問いとして、マレーシアとインドネシアで調査を実施する。両国で広く普及している古典的宗教書、各国政府の公的な見解、それぞれで人気のあるソーシャルメディアの三者における他宗教への認識に関する言説を比較分析し、またそれらの言説に各地域の人々がどのようにアクセスし、影響を受けるのかを現地調査によって明らかにする。これを通じて、現代の東南アジアムスリム社会のメディアにおけるイスラーム的言説の特徴、その生成、普及のプロセスを明らかにする。
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研究成果の概要 |
本研究の成果は大きく三つに分けることができる。第一に、ソーシャルメディアで流通している排外主義的な言説について、コロナ禍のロヒンギャ難民に対する排他的な言説の分析を行い、イスラームとの結びつきよりむしろSNSという媒体自体の問題性が明らかになった。第二に、排外主義に対抗して位置づけられる「穏健」「寛容」を目指す言説についてインドネシア、マレーシアの事例から考察を行い、それぞれの社会でこれらがやはり政治と結びついて独特な位置づけを与えられていることが明らかになった。第三に、そもそも「穏健」というラベルがオリエンタリズム的な枠組みに基づくことの問題を指摘した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究の成果は、東南アジアの社会におけるイスラームの展開についての理解にとどまらず、より一般的な「異文化を見る」ということの問題性や、差別の構造の理解につながるものであると考える。ソーシャルメディアで排他主義的言説が広まる状況はイスラームに限らず、特にナショナリズムとの結びつきで各地で見られるが、イスラームと関係づけられる場合でも構図としては変わりがない。さらに、イスラームの排他主義に対して一見問題がないように見える「穏健」「寛容」の主張にも、それを「外から」見て評価する人々のまなざしと権力関係の問題が見られる。「共生」を構想するにはその関係性を問い、変えていくことが不可欠であろう。
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