研究課題/領域番号 |
19K23141
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0104:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 (2020-2022) 日本福祉大学 (2019) |
研究代表者 |
近藤 有希子 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 助教 (10847148)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 暴力の記憶 / 情動 / 沈黙 / 分有 / 継承 / 国家の歴史 / 虐殺生存者 / ルワンダ / 被傷性 / 虐殺記念館 / 体験 / 記憶 / 虐殺 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、現代のルワンダにおいて、紛争と虐殺に関わる個別の特異な体験とその記憶が、親密な他者とのあいだに分有され、さらにそれが若い世代の者たちに継承されていく姿を民族誌的な記述を重ねるなかで検討することである。具体的には、「大人世代の個別の記憶」「若者世代の『体験』の継承」「安全と平和、共生の論理」の3点を解明するなかで、人びとがどのように親密な相手の了解不可能な過去と対峙しており、当事者もなお表象不可能な暴力の経験をいかなる形態や信念のもとに次世代に継承していくのかを考察する。
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研究成果の概要 |
本研究は、1990年代に凄惨な紛争と虐殺を経験したルワンダにおいて、人びとが「語る」という行為だけには拠らない仕方で、暴力に関わる個別の体験を親密な他者とのあいだに分有し、またそれが若い世代に継承されていく姿を民族誌的な記述を重ねるなかで描き出すことを目的とした。「大人世代の個別の記憶」に関する短期間の現地調査を遂行するとともに、戦後処理をめぐる「語ること」に関する歴史的な経緯の整理や、調査者による暴力の記憶の分有と継承に関する理論的考察をおこなった。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
西欧型の紛争解決の手続きにおいては、「語ること」が真実を同定して合意を促し、歴史を定位するうえで沈黙よりも優位な行為と考えられてきた。他方で沈黙とは、実証主義歴史学では客観的な事実の不在として切り捨てられ、精神医学ではトラウマなどの病的症状としてのみ把握される傾向にあった。本研究ではむしろ、人びとの沈黙や語りえなさの発露としての情動にこそ人びとの応答的な関係性が生じて、個別の記憶が分有し継承される可能性があることを探求したが、それは法制度や自律的な個人に委ねるのではない、人間の共感や応答能力を活かした平和の定着に向けた重要な取り組みである。
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