研究課題/領域番号 |
19K23200
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0107:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 横浜市立大学 (2020-2022) 慶應義塾大学 (2019) |
研究代表者 |
中村 祐太 横浜市立大学, 国際総合科学部(八景キャンパス), 准教授 (30848932)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | メカニズムデザイン / 紛争解決 / 社会的選択理論 / 投票理論 / q / マーケットデザイン / ゲーム理論 |
研究開始時の研究の概要 |
「紛争」は現代の私たちを取り巻く諸問題の中で最も深刻なものである。カシミールでの領土紛争から近隣間トラブルまで、私たちは様々な「紛争」に直面している。しかし、「どうすれば紛争を解決できるか」という問いには、未だ明確な回答は与えられていない。そこで、本研究では、近年急速に発達した「メカニズムデザイン理論」を用いることで、紛争を解決に導く手続きを設計する。
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研究実績の概要 |
本研究では,紛争を解決するための取り決めをする際に,いかなるプロセスを用いれば当事者たちが合意に達しやすくなるのかを,メカニズムデザイン理論の観点から分析している.特に,相反する紛争当事者たちの好み(選好)を反映して意思集約を行うために,(1)紛争当事者たちから真の選好に関する情報を申告してもらい,(2)その情報をもとに効率的かつ公平な決定を行うことを目的とする制度の設計を考えてきた. これら二つの目的を達成するため,昨年度までの研究では,(1)と(2)について個別に分析を行なってきた.具体的には,2019-2020年度の研究で,人々にとって正直な選好を申告することが最も特になる(耐戦略的な)制度を新たに設計することで,(1)の目的が状況によっては達成可能なことを示した.また,2021年度の研究では,金銭移転が認められない環境(Arrow 1951)における意思集約の公平性を考えることで,(2)の目的を達成するための下準備を行なった. 一方で,本年度の研究では,過去の研究成果を踏まえ,(1)と(2)の目的を同時に達成する制度の設計を行なった.具体的には,効率性や公平性など,本研究でこれまでに考察してきた性質を満たす制度の設計には,紛争当事者たちの選好に関する情報がどの程度パブリックである必要があるかという問いを立てた.その上で,「メカニズムのドメイン選択問題」に関する理論モデルを新たに構築することで,この問いに対して解答を与えた.本年度の研究で得た結論は,「当事者たちの選好から計算される社会的余剰に関する情報が誤差50%以内でパブリックになっているならば,複数の望ましい性質を満たすメカニズムを設計できる」というものであり,紛争解決のための制度設計に対しポジティブな示唆を与えるものとなっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究で,「研究実績の概要欄」に記載した(1)と(2)の目的を達成する制度の設計は概ね完了したといえるが,一部更なる議論を要する問題が残されている.本年度設計した制度は,耐戦略性という望ましい性質を満たすため,当事者たちにとって自らの選好を正直に申告することが最も得な戦略となっている.しかし,当事者たちが必ずしもこの事実に気づくとは限らないため,実際に制度を用いる際には可能な限り彼らにとって「わかりやすい」ルールを定めてやる必要がある.メカニズムの「わかりやすさ」に関しては,既に2020年度に研究を行なっているため,次年度は2020年度の研究成果を踏まえてこの問題に取り組んでいきたい.以上のように,一部残された課題があるものの,当初の目的はほぼ達成できたと考えられるため,本研究は「おおむね順調に進展している」といえる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究で設計した制度では,紛争当事者たちは相手の行動を一切観察せずに,選好を同時に申告せねばならない.したがって,紛争当事者たちにとって,正直申告が最も得な戦略であることが「わかりにくい」制度になってしまっている可能性がある(Li 2017).そこで,次年度の研究では,本年度の研究で設計した制度をより「わかりやすい」ものに改善するための分析を行っていきたい. また,本研究は2019年度にスタートしたものであるため,新型コロナウィルスの蔓延は想定していなかった.本年度も新型コロナウィルスによる行動制限が完全には解除されていなかったため,当初の計画通りに海外の研究者と直接議論することが現在までできていない.そこで,研究最終年度となる次年度は,海外の研究者と積極的に交流した上で,研究成果を論文に纏め,アウトリーチ活動も行なっていきたい.
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