研究課題/領域番号 |
19K23238
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0107:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 中央大学 (2021-2022) 大阪国際大学 (2019-2020) |
研究代表者 |
若松 直幸 中央大学, 経済学部, 助教 (50847340)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | デイヴィッド・リカード / 経済学方法論 / ジェームズ・ミル / ジョン・スチュアート・ミル / 経済学説 / 古典派経済学 |
研究開始時の研究の概要 |
リカード経済学は、一般に抽象的とみなされ、それは、一方では経済メカニズムの理解を容易にするとして称賛され、他方ではそれが必ずしも現実の経済状態に一致しないことから多くの批判を招いた。経済学を、抽象的に論じるべきか、あるいは実際的に論じるべきかどうかは、経済学がどのように研究されるべきかという方法論上の問題において、 きわめて重要と思われる。とはいえ、リカードの分析方法については、これまでもっぱら経済理論の側から研究されてきた。そこで本研究は、この問題にリカード財政論の側から着手する。本研究は、経済学における抽象分析の意義を再考することにつながり、学術的に意義のある独創的な成果が期待される。
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研究実績の概要 |
本研究代表者は、2021年度に「リカードウの重層的方法 ー賃金課税と外国補助金の考察 」という表題でリカードの方法に関する報告を行った(第255回経済学史研究会)が、そこで得たコメントに基づいて、リカード方法論研究を2つの方向に進展することができた。 第一に、リカードの経済学は単純な原理を基盤としながら条件次第で様々な結果をもたらすという点について、2021年度の報告より簡潔にまとめ、それを2023年1月にsurvey論文「2000年代以降の国内外のリカードウ研究」(『経済学史研究』 64巻2号, pp. 45-67 2023年1月)第IV節において論文化した。 第二に、2021年度の報告で論じたリカードの賃金課税論に関する数理モデルは、必ずしもリカードの経済体系と合致しない可能性があると指摘された。そこで、リカードの経済成長論のモデルとして認められた、カサローサのリカード・モデルに基づいてリカードの賃金課税論に関する分析を行い、条件次第で理論の結果が変わるということを数理モデルでも示した。この研究は、2023年3月に'Ricardo and the Origin of Dynamic Tax Analysis'というタイトルで報告された(International Workshop on Classical Political Economy 2023)。 他方で、2022年度はリカードの方法の基礎について論じる機会があり、マルクスやスラッファの経済学とも比較する形で、「資本主義の把握において階級概念はいかなる意味で本質的かーリカードウ、マルクス、スラッファ」(『経済学史入門ー経済学方法論からのアプローチ』第4章)として執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題の進捗状況が遅れている理由として、次の理由を挙げることができる。 第一に、2021年度に行われた研究報告に基づいて、2022年度は、主としてリカードの方法について分析し直す必要が生じていた。結果的にこれらの問題は解決に向かっているが、他方で、依然としてリカード派の方法の考察に十分な時間を割くことができていないという状況にある。 第二に、2020年から猛威を振るっていた新型コロナウイルス感染症の問題を挙げることができる。当該感染症問題のために、2022年度においても、特に海外での学会発表への参加が困難な状況であった。本研究課題の遂行にあたり、海外での研究報告の実施・内容の改訂を予定していたため、そうした手段がとれなかったことが本研究課題遂行に大きな影響を及ぼしている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題については、今後以下のように進めていくことを予定している。 第一に、カサローサのリカード・モデルに基づくリカードの賃金課税論に関する研究については、2023年6月にThe 26th Annual Conference of the European Society for the History of Economic Thought (ESHET)で報告が予定されている。そこでの報告を終えたのち、当該研究を海外の学術誌に投稿する。 第二に、ジェームズ・ミルやジョン・スチュアート・ミルの方法について、リカードの方法と比較する形で研究を行い、研究報告、論文化を行っていく。こちらについては、時間の制約もあり、2023年度内の論文化は難しいかもしれないが、少なくとも研究の骨子ができるところまでは研究を進める。
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