研究課題
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近年のレイシズム研究・白人性研究においては、19世紀後半から20世紀初頭に活性化したアジア人の国際移動に着目し、彼らの到来に反発した白人入植植民地の連携によってグローバルな白人意識が大きく再編されたことが論じられるようになった。本研究ではその舞台の一角とされる南アフリカについて、アジア系住民の抵抗・交渉・同調・迂回といった諸実践が当地の人種的秩序にいかなる影響を与えたのかを社会学的手法を用いて明らかにする。これを通して、排除と包摂をめぐる境界の弾力性をレイシズムそのものの特徴として最定位し、そこで得られた批判的解明を現代における社会的寛容と共生のための研究に還元することを目指す。
本研究では、19世紀後半からアパルトヘイト体制が終焉を迎える1990年代初頭までを視野に収め、レイシズム研究、白人性研究の立場から、アジア系移民/住民の位置の変容と現地社会との交渉を検討した。とりわけ重点的に注目したのは、南アフリカに暮らす日本人を指す呼称として使用されていた「名誉白人」概念である。この概念の起源や受容の再検討を通じて、「名誉白人」概念が19世紀後半からのトランスナショナルな白人意識の形成と密接に結びついていたこと、待遇改善を目指す彼らの諸実践がときにはアフリカ人社会との葛藤を招来しうるものであったことを明らかにし、中間性の重要な一側面として位置づけた。
近年、アフリカ-アジアという枠組みが再活性している。学術研究の世界でも重要な研究成果が相次いで出版されるとともに、大規模な学術研究ネットワークや国際研究集会も設立・開催されるようになった。それに伴い、南アフリカの人種的序列において入植者/ヨーロッパ系住民とアフリカ人との中間に置かれてきたアジア系移民/住民への関心も高まりつつある。彼らは当地の総人口の2~3%を占めるに過ぎないが、その差異化戦略が社会の人種化に強度を与えるものとして積極的な観察の対象とする研究も現れている。本研究は、日本のアフリカ研究の立場から本領域の推進に貢献するものである。
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