研究課題/領域番号 |
19K23247
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0108:社会学およびその関連分野
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2020年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 普遍的平和 / 記憶 / 原爆 / 言説変遷 / 継承 / 核被害 / 実証研究 / 計量テキスト分析 / 言説 / 表象 / アイデンティティ / 原爆・被爆 / 記憶継承 / 市民参画 / ツーリズム / 博物館 / 実証 / 原爆・被爆体験 / 言説・表象分析 |
研究開始時の研究の概要 |
本実証研究は、原爆・被爆体験の継承における「普遍的平和」の概念に焦点を当て、被爆という負の個人記憶が、世界の恒久的平和を希求する国際的集合記憶へと昇華されたプロセスを解明する。被爆直後から、都市復興とコミュニティ再構築を経て現在に至るまでに、被爆者や非被爆者が、「恒久的平和に向けて行動する市民」の「当事者性」をどう形成してきたのか、その過程と条件を探る。記憶継承において、平和への「責任感」や「国際的な使命・役割」ほか社会参画の概念と「居場所」獲得の概念とが、普遍的な平和希求の概念構築にどう関与したか解明する。更に、「当事者」言説の共有が、欧州の非核・平和言説の発展に関与する実態を解明する。
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研究成果の概要 |
壮絶悲惨な原爆・被爆体験は、いかにして普遍的平和の希求へと昇華されたのか、総数3万件の証言や口コミなど一次資料からデータ構築・解析を行い、実証記憶学の理論と多領域横断型手法を用いて原爆・被爆体験に関する言説の形成・伝播・変遷過程を精査し、背景と事由、条件、プロセスを明らかにした。被爆者を取り巻く社会情勢・報道・当事者の自己表現が、相互に作用しながら集合記憶が形成される過程で、①被爆の実相、②被爆後の生き様、③核兵器廃絶に関する「記憶が更新」され、普遍的平和概念が発生したことと、②の情報欠如は継承を妨げることを実証した。成果は、SCCI論文など査読付き論文6本、学術書の担当章と英訳書を含む。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究は、3万件を超える一次資料データを構築し、定性・定量分析を用いて、原爆・被爆体験に関する言説の形成・伝播・共有・変遷過程を精査することにより、被爆者の言説が、原爆投下に対する怒りと憎しみから普遍的平和の希求へと昇華した変遷プロセスを実証的に解明した。さらに、継承する側とされる側が発信するメッセージの内容を可視化して整合性を経時的に検証し、意思疎通の条件を同定し、それを基に将来の効果的な継承の方策を示唆した。これは、まさに切迫した課題である次世代への被爆体験の記憶継承に資するものである。学術的着眼点、方法論ともに斬新且つ画期的である本研究は、普遍性に富む平和的な戦争記憶継承に活路を見出す。
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