研究課題/領域番号 |
19K23293
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0109:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 東京国際大学 |
研究代表者 |
久保 亜希 東京国際大学, JLI, 講師 (70846873)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 日本語学習者 / 合意形成 / 不同意 / 話し合い / 「かな」 / 合意形成談話 / 接触場面 / 対立 / 介入 / 談話分析 / ベトナム人日本語学習者 / 隣接対 |
研究開始時の研究の概要 |
日本語学習者にとって難しい談話の一つに、意見一致を目指し、話し合いを進めていく談話が挙げられる。この談話では、対話者との関係性を考慮して対立を示したり、相手の意見を取り入れつつ自分の意見を調整したりしている。また、学習者が日常的に遭遇する場面でもあるため、学習者が抱く困難な点や、日本語母語話者との相違を知ることは重要である。 本研究では、在日ベトナム人の増加という社会背景から、ベトナム語を母語とする日本語学習者に焦点を当て、話し合い中の会話の様相を明らかにすることとする。会話を詳細に観察することで、彼らがどのように意見を述べ合い、合意に向けて意見を調整していくのかを分析する。
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研究実績の概要 |
本年度は、接触場面での合意形成場面において、英語を母語とするアメリカ人日本語学習者が「かな」を用いながらどのように意見を述べるのかを明らかにすることを目的とし、分析を行った。「かな」は基本的には疑いを表す表現だとされるが、対話で上昇調に提示しされると応答を強制しない質問になるという特徴もある(安達,2002)とされる。相手に配慮しつつ意見を求めることができる発話であるため、合意形成談話にとって重要な表現であると言える。 その結果、日本語学習者の「かな」の使用は、母語話者と同等程度の産出数が見られた。特に、具体案を挙げる際に使用され、断定を避けようとする際に使用していた可能性がある。その一方で、母語話者が使用した「かな」の意図を読み取れていなかったり、学習者の意図が母語話者に伝わらないように見えたりする箇所や、母語話者とは異なり積極的に同意を示す際にも使用していたりなど、特徴的なやり取りも観察された。 タスク終了後に行ったアンケート調査では、日本人ははっきりと意見を述べない傾向があると考えている学習者も多く、断定的な意見述べを避けるために「かな」を使用していたと考えられる。日本語母語話者も積極的に使用していたことから、「かな」は学習者にとって聞き慣れていて馴染みがあり、比較的産出も容易な表現であることが窺える。しかしながら、その発話意図が母語話者には読み取りにくく、やりとりに支障が生じているような様子も見られた。「かな」は発話のインネーションによっても相手に与える印象が変わることから、細かな指導が必要であるといえる。 本研究の研究成果はCAJLE(カナダ日本語教育振興会)で発表し、その後大会Proceedingへの投稿を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画はコロナ禍前に立案したものであったが、コロナ禍では留学生の入国が制限され、予定していた対面での調査が行えなくなったため、計画の変更を行わざるを得なかった。その計画変更に時間がかかり、また調査の実施自体も遅れてしまった。 また、途中産前産後休暇、育児休暇を取得し、一時研究を中断していたため、予定よりも研究の進捗が遅れてしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍前までに収集したデータの再分析に加え、昨年度収集したデータを用い、対面での話し合い談話と、オンラインでの話し合い談話の比較を行う予定である。 話し合い談話では「提案」に対して「不同意」が生じる場合があるが、これは非選好的応答となり、「同意」と比較すると遅延して出現するといわれている。今までの対面でのデータ分析では、日本語学習者は沈黙による不同意を読み取ろうとする様子も見られたが、オンラインの場合では頻発すると考えられる。不同意の前兆が生じるのかどうか、前置き表現など、そのほかの資源を用いて不同意を表明しようとするのかに注目することとする。 しかしながら、オンラインでの会話ではタイムラグが生じることが多々あり、それが「不同意」の予測に影響を与える可能性が考えられる。今年度はオンラインの話し合い談話と対面での話し合い談話の「不同意」を比較し、日本語学習者がどのように話し合いを進めていくかを分析する予定である。 分析後は年度末に実施される学会での発表に加え、論文での結果の公開を予定している。
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