研究課題
研究活動スタート支援
本研究の目的は,新しい観点に発想を転換する思考(洞察)の無意識的な心のプロセスを解明することである。特に不要な情報を排除する認知機能(抑制機能)に着目する。本研究ではこの目的達成のために,実験室での心理学実験をベースとした二つの研究を実施する。研究 1は,抑制機能と洞察を生み出す無意識的はたらきに因果関係があることを明らかにする。研究 2は,抑制機能を弱めることでより洞察が生み出されやすくなることを明らかにする。研究 1を2019年度に実施し,研究 2を2020年度に実施する。
本研究では,洞察問題解決における抑制のしくみを明らかにするためのオンライン実験に取り組んだ。その結果,抑制がはたらく人は洞察問題を解けなくなる場合があることが示された。また洞察問題は記憶との親和性も高いことから記憶研究にも取り組んだ。読みにくい文字の方が記憶が保持されるという現象(非流暢性効果)について,感情とワーキングメモリの観点から検討した。その結果,非流暢性効果は観察されなかったが,読みにくい文字よりもむしろ読みやすい文字で記憶が保持されやすいことが明らかとなった。
本研究の成果は,無関係な情報を排除する認知機能である抑制が必ずしも洞察問題の成績を促進しないことを示した。発想の転換が必要な洞察問題解決では,思いつきやすいアイデアを抑制できる人の方が洞察問題や創造性の課題で成績が良いと言われている。しかし,本研究はそれらの研究とは異なる結果を得たことから,本研究は,洞察問題には未だに明らかではないしくみが存在することを示唆した。抑制が弱い人の方が洞察問題の成績が良いということは,洞察問題では無関係なアイデアを記憶から採用する認知的なしくみが解決にとって重要であるのかもしれない。本研究で得た知見は将来的には創造性教育として発展する可能性がある。
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認知科学
巻: 28 号: 1 ページ: 178-181
10.11225/cs.2020.067
130007998463
http://research-db.ritsumei.ac.jp/Profiles/147/0014643/profile.html