研究課題/領域番号 |
19K23431
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0202:物性物理学、プラズマ学、原子力工学、地球資源工学、エネルギー学およびその関連分野
|
研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
富田 隆文 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 特任助教 (50846392)
|
研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
|
研究課題ステータス |
完了 (2021年度)
|
配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 冷却原子 / 開放量子系 / 光ピンセット / 光学 / 原子分子 / 量子エレクトロニクス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、冷却原子気体を用いて、量子多体系に対して散逸が及ぼす影響を単一原子レベルで観測する実験を行う。散逸によって生じるロスイベント(量子ジャンプ)の数に応じて結果を分類し、事後選択的に解析することで、開放量子多体系における量子トラジェクトリごとのダイナミクスを明らかにする。光ピンセット配列による効率的な原子のトラップと冷却により、高速にデータを取得することで、実現確率が極めて低いイベントをサンプリングし統計的に解析する。これにより、開放量子多体系のダイナミクスを統計的混合状態で記述するという従来研究されてきた枠組みを超え、散逸が及ぼす非自明な効果を解明する。
|
研究成果の概要 |
本研究では、光ピンセット配列中の冷却原子気体を用いて、個別観測と事後選択的統計処理に基づく開放量子多体系の理解を目標とした。初めに、本実験を行うための装置を開発し、原子間距離を精密に制御した大規模光ピンセット配列中に、振動基底状態まで冷却されたルビジウム原子を導入し、個別観測することに成功した。さらに、光ピンセットが原子に対して及ぼす散逸の影響を定量的に評価した。また、2原子をリュードベリ状態へと励起し、原子間にナノ秒スケールの超高速相互作用を誘起させることに成功した。これらの要素技術を統合することによって、今後開放量子多体系のダイナミクスを追跡することが可能になる。
|
研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究で開発された要素技術を組み合わせて開放量子多体系のダイナミクスを追跡することで、近年発展を見せる非エルミート系理論の実験的検証や、統計的混合状態では見られない非従来型ダイナミクスの観測が可能になる。また今回実現した光ピンセット配列系は、量子コンピュータ技術として応用可能である。実際、超高速原子間相互作用は、2量子ビット操作の資源として使うことができることから、将来の量子コンピュータ社会実装へとつながり得る。また、光ピンセットに関する光学技術の開発によって得られた成果は、冷却原子実験に対してのみならず、光ピンセットを用いる他の研究分野に対しても有用な知見を与えると期待される。
|