研究課題/領域番号 |
19K23442
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0203:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
樋口 嵩 大阪大学, 核物理研究センター, 特任助教(常勤) (90843772)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 磁場安定化 / 素粒子物理学 / 原子核物理学 / 超冷中性子 / 中性子 / 磁場測定 / 電気双極子モーメント / 加速器 / 基本的対称性 |
研究開始時の研究の概要 |
TRIUMF研究所における中性子電気双極子モーメント(EDM)探索実験のための,多次元フィードバックによる動的磁場補償システムの開発を行う.中性子EDM測定において統計誤差を決定す主要因は磁場の安定性である.特に,本実験の場合,実験装置が加速施設内に位置するために.強い背景磁場や,大きな磁場変動が存在する環境で測定を行うことになる.本研究では,実験装置が位置する施設の磁場環境に即した動的磁場補償システムを開発し,10^{-27}ecm程度の感度での中性子EDM探索を可能にする安定性を実現するシステムの構築を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究では、TRIUMF研究所における中性子電気双極子モーメント(Electric Dipole Moment, EDM)探索実験のための多次元フィードバックによる動的磁場安定化システムの開発を目指している。目標とする精度における中性子EDM測定には極めて高い磁場の安定度が要求されるが、これを加速器施設内において実現するためには、施設内の背景静磁場や変動磁場を打ち消す補償システムが必要となる。例えば、中性子EDM装置が設置される予定の施設では、サイクロトロンの漏れ 磁場による 100 uT オーダーの背景静磁場が存在するうえ、施設内の他の実験の活動や輸送用の天井クレーンの動作による磁場変動が発生する。強い静磁場は外部磁場を遮蔽するための磁気シールドを飽和させる恐れがあるため、補償システムが作り出す磁場によって打ち消す必要がある。またシールドの外側での外部磁場変動はEDM測定中は100 nT 程度までに抑える必要がある。本研究では、中性子EDM実験を行う予定の施設内に存在する環境磁場に即した補償システムを設計し、そのプロトタイプを製作することを目指している。
2022年度は、8-11月にTRIUMFに長期滞在し、動的磁場補償の主な対象の一つである天井クレーンについて、一辺5.5mの正方形型コイルと中心付近に配置された6個のフラックスゲート磁束計によるプロトタイプを構築し、動的磁場補償の試験を行った。その結果、PID制御のパラメーターを最適化することで、対象となる補償領域中心付近において、鉛直方向振幅約10 uTの磁場変動を6から7分の1にまで補償することに成功した。長期的にエリアにインストールするシステムについては、2023年11月にインストールする予定であり、それにむけての検討や部品調達を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的としていた、プロトタイプの補償システムによる動的磁場補償試験を完了した。ホール内に典型的に発生する天井クレーンによる磁場変動に対し、補償対象領域中心付近において約7の遮蔽係数を達成した。近い将来、実験施設に別のグループの超伝導磁石が新たに設置されることが予定されているが、シミュレーションの結果、これが新たな磁場変動源となることが分かった。2023年後半に完成する実機では、それにも対応したコイルを追加する方針で、検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
実験施設に新たに設置される予定の別のグループの超伝導磁石は、我々の実験エリアにおいて最大で約30 uTの水平方向に一様な磁場を発生させることが予想されている。これに対応するため、実機では水平方向の磁場補償のためのコイルも備えたシステムを設置するために、必要なシミュレーションや部品設計・調達を行っている。
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