研究課題/領域番号 |
19K23466
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0204:天文学、地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
梅原 章仁 気象庁気象研究所, 台風・災害気象研究部, 研究官 (10845944)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 二重偏波レーダー / 降水粒子判別 / 降水粒子撮像ゾンデ / 発雷 / 降雹 / 前兆把握 / 突風 / ダウンバースト / 竜巻 / 竜巻飛散物 / 降水過程 / 災害前兆 |
研究開始時の研究の概要 |
雷や突風の発生には、積乱雲内部の降水粒子の分布構造が深く関わるため、その把握が重要である。近年の二重偏波レーダーの普及により、従来型レーダーにない、降水粒子の情報を反映した複数のパラメータが得られるようになり、それらを用いた降水粒子判別手法が開発されつつある。しかし、既存手法は、現実大気の複雑な降水粒子を表現しきれず、また、降水粒子判別手法を用いた雷や突風の研究例も僅かであり、それらの前兆を把握するには至っていない。本研究は、まず、機械学習的アプローチにより新たな降水粒子判別手法を開発し、次に、当該手法を雷や突風事例に適用することで、それらの前兆把握への応用可能性を示す。
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研究実績の概要 |
本研究は,二重偏波レーダーデータを用いた新たな降水粒子判別手法を開発し,その手法を雷・突風事例に適用することで,前兆となる微物理構造の特徴を明らかにし,前兆把握への応用可能性を探ることを目的としている.2022年度においては,これまでに開発・改良した降水粒子判別手法を実事例に適用した解析を行い,以下①②③の実績を得た.①2022年6月2日,3日に関東地方に甚大な降雹被害をもたらした事例について,開発した降水粒子判別手法を適用した結果から降雹域を特定し,シチズンサイエンスの枠組み等により収集した地上被害域との比較を行った.その結果,推定降雹域は雹被害域と良く対応していること,大きな雹ほど降水軸から離れている傾向があることが分かった.これらの結果をまとめ日本気象学会にて発表した.②降水粒子判別手法の評価観測を実施した.昨年度に引き続き上空の降水粒子を直接撮像する降水粒子ゾンデと二重偏波レーダーの同期観測を実施し,レーダーで雪(強)と判別していた領域が実際には数濃度もしくは粒径の小さい霰である場合があることを明らかにした.また,下層正電荷の生成メカニズムや雹の生成メカニズムに重要な,凍結雨滴,融解霰などの固形降水に紐づく二重偏波データを得ることに成功した.③降水粒子判別結果を用いた発雷予測指標の開発に向けた電荷構造の生成メカニズムに係る研究を深化させた.夏季の典型的な雷を伴う積乱雲に対して,三次元放電路標定観測装置の解析から得られた電荷分布構造と開発した降水粒子判別手法の判別結果の比較を行い,降水粒子判別結果の妥当性とともに,発雷ポテンシャルの推定に重要な電荷分布と降水粒子の対応及びそこから考察される下層正電荷の生成機構をまとめて国際学会・国内学会で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
霰・雹・湿雪・0度高度以上の液相粒子・竜巻飛散物の判別妥当性を確認した降水粒子判別手法のプロトタイプを開発した.固形降水の検証用データが不足していたため,昨年度に引き続き,降水粒子撮像ゾンデとの同期観測によるデータ蓄積を行ったものの,十分な観測データが得られたのは1事例に留まった.また,当該手法において一定の妥当性が確認できている粒子種別を用いて新たに降雹,発雷に関する事例解析を実施し,一定の成果を得た. 一方で,2022年6月に生じた顕著な降雹被害の解析に係る優先度を上げたため,計画していた論文投稿にやや遅れが生じたため,一年延長した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた降水粒子撮像ゾンデによる直接観測データや,降雹被害地点情報を用いて,固形降水粒子に関連する降水粒子判別結果の妥当性を検証する.また,発雷の前兆把握に向けて,昨年度に引き続き,これまでに得られた降水粒子と電荷分布との関係から電荷分離機構の解明に取り組み,成果の取りまとめを行う.
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