研究課題/領域番号 |
19K23565
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0304:建築学およびその関連分野
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
水谷 悦子 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 研究員 (90849796)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2020年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 塩類風化 / 表面電荷 / 水分拡散係数 / 画像解析 / 3DMA / ゼータ電位 / X線CT / 電粘性効果 / 拡散係数 / 空隙構造 / 焼成煉瓦 / 組積造 / 移動物性 / 熱水分塩同時移動 / 塩析出 / 煉瓦 / 湿気物性 |
研究開始時の研究の概要 |
材料中の塩水移動の定量的予測は、煉瓦造建築物の塩類風化による劣化メカニズムや対策を考える上で重要である。本研究は材料中の塩溶液の輸送現象と塩析出に及ぼす影響を解明し、それを考慮した劣化予測モデルを開発することを目的とする。γ線含水率計などの非破壊測定法を用いた吸水実験により、バルク溶液の特性や表面電荷が塩溶液の移動に及ぼす影響を評価する。また、煉瓦における塩析出性状と空隙構造変化に伴う水分移動性状の変化をX線CTの画像解析により定量的に明らかにする。これらの結果を踏まえ、塩を含むことによる水分の移動性状の変化を考慮した熱水分イオン同時移動、析出解析理論を構築する。
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研究成果の概要 |
煉瓦造建造物を対象とした信頼度の高い塩類風化予測モデルの開発のため、焼成煉瓦の表面電気的特性と塩析出に伴う空隙構造変化が塩溶液と水蒸気の移動特性に与える影響を定量的に評価した。実験には負の電荷を有する二種類の国産焼成煉瓦を使用した。煉瓦における塩溶液の吸水速度はバルク溶液の特性から想定されるものより著しく遅くなることが確認された。また塩溶液を含ませた煉瓦の3次元画像の画像解析により、乾燥過程の析出塩の材料内での分布を定量的に明らかにした。さらに塩析出前後の画像を対象に細線分化処理を行い、結晶生成に伴う空隙構造変化を定量的に示し、結晶生成量と透水係数、蒸気拡散係数の減少量との関係を明らかにした。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
塩類風化の予測モデルの開発に向けては、多孔質材料中での塩類輸送や塩析出性状を定量的に示すことの難しさから、考慮すべき現象の把握や妥当性の検証が困難であることが問題である。本研究ではガンマ線減衰法や放射光X線CTといった非破壊分析手法の利用や画像解析の工夫により焼成煉瓦の表面電気的特性と塩析出に伴う空隙構造変化が塩溶液と水蒸気の移動特性に与える影響を定量的に評価し、これにより輸送性状に影響を及ぼす諸要因が検討可能になった。また表面電荷が毛管圧による溶液の輸送に影響を及ぼすことを示唆する結果を得たことは、数値解析モデルの開発のみならず実建造物の保存処置方法を検討するうえでも重要な知見である。
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