研究課題
研究活動スタート支援
本研究は、北海道大学附属動物病院において放射線治療を実施する腫瘍罹患犬を対象とし、放射線治療前と治療後における腫瘍のPD-L1の発現の変化、リンパ球数および血中の炎症性サイトカインなどについて評価し、放射線治療によって腫瘍の免疫回避機構が増強することを評価検討する。それと並行し、これまで、抗PD-L1抗体単剤で評価を行ってきたイヌのメラノーマに対して、放射線治療を併用して治療効果を判定し、抗PD-L1抗体の治療効果が放射線と併用することによって改善するかを評価検討する。
本研究は、犬腫瘍細胞株を用いてX線照射によって犬の腫瘍の免疫回避機構(Programmed Cell Death-Ligand 1(PD-L1))が誘導することを示した。症例分析において、犬の悪性黒色腫を対象に、放射線治療と抗PD-L1抗体の併用療法において肺転移の進行が遅延する傾向が認められ、放射線照射が抗腫瘍免疫を活性化することが示された。以上から、放射線治療によって腫瘍の免疫回避機構が誘導され、免疫応答による抗腫瘍効果が相殺され、治療効果が減弱されていることが示唆された。また、誘導された免疫回避機構を阻害することで、免疫療法を補う新しい放射線増感治療が実践できることが期待された。
本研究は放射線による免疫抑制機構の獲得をイヌの腫瘍細胞株で評価し、腫瘍の免疫回避機構阻害剤の治療効果を放射線治療との併用下で評価することを目的としている。本研究の成果は、これまでの放射線治療ならびに免疫療法の問題点を解決するブレイクスルーとなり後続研究へ応用される可能性が非常に高い。また、本研究で得られた結果は獣医療だけに限定された問題ではなく、医療における根治に至らない腫瘍疾患に対しても適応可能な進展性のある研究と考えられる。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
npj Precision Oncology
巻: 5 号: 1 ページ: 10-10
10.1038/s41698-021-00147-6