研究課題
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小胞体ストレス応答は、異常なタンパク質を感知し、修復や分解除去をすることでタンパク質の品質管理を行う、生体の恒常性維持に必須の機構であるが、糖尿病など種々の病態に関与することも指摘されている。我々は、コレラ毒素(CT)の構成分子である、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)の免疫アジュバント作用の分子基盤を解明する過程で、CTBが小胞体ストレス応答を誘導するという知見を得た。本研究では、免疫アジュバント作用に、小胞体ストレス応答がどのように関与するのかを明らかにする。本研究により、小胞体ストレス応答機構を標的とした、種々の病態を制御する新規の薬剤の開発が可能になることが期待される。
コレラ毒素(CT)は、免疫アジュバントとしてT細胞応答や抗体産生などを誘導するが、その作用機序は不明である。我々は、マウス腹腔マクロファージにおいて、CTの構成因子であるBサブユニット(CTB)とリポ多糖(LPS)の刺激により炎症性サイトカインIL-1βの産生が相乗的に誘導されることを見出した。本研究では、この分子機構の解明を目指す。網羅的遺伝子発現解析(RNAシーケンス)により、CTB刺激により小胞体ストレス応答関連遺伝子群の発現が上昇することがわかった。今回、小胞体ストレス応答がCTBによるIL-1β産生誘導に関与することを明らかにしたので、ここに発表する。
本研究により、生体内のマクロファージにおける小胞体ストレス応答機構が明らかとなり、CTBによる免疫アジュバント活性の分子機序の一端が明らかとなった。小胞体ストレス応答は糖尿病などの慢性炎症性疾患の病態形成に密接に関与することが示唆されているが、その分子機序は不明な部分が多い。本研究成果は、微生物感染に対する有効な免疫アジュバントの開発に貢献するだけでなく、小胞体ストレス応答が関与する種々の慢性炎症性疾患の新規治療薬の開発にも貢献することが期待され、波及効果の大きいものであると考えられる。
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British Journal of Cancer
巻: 122 号: 8 ページ: 1185-1193
10.1038/s41416-020-0757-2
International Immunology
巻: 印刷中 号: 10 ページ: 657-668
10.1093/intimm/dxz004