研究課題/領域番号 |
19K23900
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0901:腫瘍学およびその関連分野
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
渡辺 崇 藤田医科大学, 医学部, 講師 (10402562)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2020年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | がん幹細胞 / 乳がん / S100A10 / 肝転移 / 転移 / S100タンパク質 / 転移・潜伏 / S100 |
研究開始時の研究の概要 |
転移や再発した乳がんに対する治療効果は依然限定的であることからも、転移や再発を抑える方法を見出すことは乳がん患者の予後改善のために重要である。特に、治療抵抗性を有し長期に渡り転移先の臓器に潜伏する転移がん細胞は「がん幹細胞」の性質を持つとされる。我々は、乳がんの手術検体を移植したマウスモデルを用いて、転移巣のがん幹細胞で原発巣のがん幹細胞に比べS100蛋白質が30倍以上強く発現していること、S100ががん幹細胞の肝転移と腫瘍形成能を強力に促進することを見出している。本研究では、乳がん幹細胞の転移と潜伏におけるS100の働きの解析に焦点を絞り、乳がん転移の克服を目指す基礎研究を推進する。
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研究成果の概要 |
我々はがん幹細胞が肝臓に転移巣を形成する乳がん患者由来の腫瘍異種移植(PDX)マウスモデルを確立し、肝臓に転移したがん幹細胞でS100A10の発現レベルが原発巣よりも高いことを見出した。S100A10がマトリックスメタロプロテアーゼ活性やがん幹細胞関連遺伝子の発現レベルを制御し、乳がん細胞のS100A10発現量とin vitroでの浸潤能力や3次元オルガノイド形成能力には相関関係があることを明らかにした。また、S100A10の遺伝子発現を抑制すると、乳がん細胞の生体内での肝臓への転移能力が著しく低下した。S100A10は乳がん幹細胞の転移促進因子として機能していることが示唆された。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
我々はS100A10が転移がん幹細胞で特異的に発現し、転移の超早期段階から発現していることを見出し、S100A10がどのように転移がん幹細胞の性質や転移能を調節しているか明らかにした。本研究は転移乳がん細胞の「がん幹細胞」としての性質の維持と「超早期」の転移巣での生存を制御する分子機構を解明した点で学術的意義が大きい。また、公共データベースでの解析によりS100A10の発現レベルと全生存期間との関係には負の相関が認められるため、原発巣でのS100A10の発現が予後を規定する因子、病理診断マーカーとなる可能性がある。今後、本研究成果を元に応用研究が進むことを期待している。
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