研究課題
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KRAS遺伝子はヒトがんの中で最も高頻度に変異しており膵臓癌、大腸癌、肺癌などの難治癌にその変異が多くみられる。しかし蛋白質の構造からKRAS自体を治療標的とすることは不可能とされている。近年我々はKRASが他のがん遺伝子であるSHP2から直接活性化を受ける新しい機序を発見し、SHP2を標的とすることでRASの働きを不活性化することを明らかとした。本研究ではSHP2とKRASの関係についてさらなる解析を加え標的治療の可能性を探るとともに、KRASの変異型によるSHP2阻害剤の感受性を網羅的に解析することにより、将来的には個別化医療へと応用することを目指す。
KRAS遺伝子は肺癌や膵癌などの難治性癌においてその変異率が非常に高いものの、その立体構造等から特定の変異型以外では治療標的にはなり得ていない。近年申請者らは世界に先駆けて発癌性ホスファターゼであるSHP2がRASチロシンリン酸化を厳密に制御し、SHP2阻害がKRAS変異のある膵癌や肺癌で抗腫瘍効果を発揮することを示した。この結果を基盤とし、KRASQ61Hを有する肺癌や膵癌モデルにおいてSHP2阻害剤が抵抗性を示すことを明らかとした。Q61H変異ではチロシンリン酸化によりRAF結合・下流シグナルに与える影響は認めず、SHP2阻害剤を投与しても治療的効果が限定されると考えられた。
SHP2は脱リン酸化酵素として初のがん遺伝子であり、機序は不明ながらKRASシグナルに深く関与する一方で、KRASと同様に長らくundruggable targetと考えられていた。しかし近年SHP2に対する低用量かつ経口投与可能な薬剤が開発されている。今回申請者はKRASとSHP2を直接関連づけるメカニズムとしてKRASリン酸化モデルを提唱した。さらに特定の変異型に対するSHP2阻害の感受性の違いを明らかとした。SHP2阻害剤は現在Phase I試験中であるがKRAS変異型による感受性の差を考慮した臨床試験のデザインが必要であり、今後への提言としたい。
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