研究課題
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急性骨髄性白血病(AML)は依然として難治性悪性疾患の一つである。AMLの中では予後良好群とされるcore binding factor-AML(CBF-AML)においても、約40%の症例で再発が認められる現状は克服すべき課題である。本研究では、再発CBF-AML骨髄から同定された好中球エラスターゼ/セリンプロテアーゼの発現異常が白血病細胞ならびに正常造血にもたらす影響について解析することで、CBF-AMLの発症および治療抵抗性獲得との関わり・機序を解明し、白血病治療において正常および変異型好中球エラスターゼ/セリンプロテアーゼ遺伝子が新規治療標的となる可能性について検証を行う。
AML患者骨髄の遺伝子変異・発現解析により、CBF-AMLおよびNRAS変異を有するnon-CBF AMLにおいてセリンプロテアーゼ遺伝子の一つであるPRTN3が高発現していることを明らかにした。PRTN3を欠失させたCBF-AML細胞株では、72時間で細胞周期停止を認めアポトーシスに至ることを見出した。これらの細胞のトランスクリプトーム解析により、PRTN3高発現がRasシグナル伝達亢進、MAPKリン酸化、細胞周期進行を引き起こす経路が示唆された。白血病マウスモデルにおいて、PRTN3欠失群で生存期間の延長を認め、同分子がAMLの維持・増殖に必須な蛋白であることを明らかにした。
CBF-AMLはAMLの中でも予後良好群とされるが、現行の治療法では約40%の患者が再発を来す現状は克服すべき課題である。CBF-AMLは染色体異常から生じるキメラ融合分子が白血病発症に関わると報告されているが、その発症、治療抵抗性獲得機序については十分明らかでなく、その解明とともに新規治療法の確立が望まれる。本研究では、難治性CBF-AML患者検体から新規に同定したセリンプロテアーゼ遺伝子PRTN3の機能解析により、AMLの維持・増殖に関わる既報にない機序が示唆された。この成果から、同分子が新規のAML治療標的として今後治療法開発につながる可能性があり、臨床的観点からも大きな意義がある。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
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