研究課題
研究活動スタート支援
申請者は肺腺癌の約10%において転写因子ASCL1の発現で定義されるサブグループが存在し、またASCL1陽性の肺腺癌組織のトランスクリプトーム解析では、腫瘍免疫応答を反映する免疫細胞マーカーの発現レベルが極めて低いことを発見した。免疫組織化学染色では、ASCL1陽性の肺腺癌はPD-L1の発現を認めず、免疫チェックポイント阻害剤への応答性が乏しいと考えられた。本研究では肺癌においてASCL1の発現によって生じうる腫瘍免疫応答の抑制機構を明らかにし、治療法選択の指標となるようなバイオマーカーの同定や、ASCL1や神経内分泌分化を標的とした新たな肺癌治療戦略を構築することを目的とする。
研究者は転写因子ASCL1が肺癌の腫瘍免疫機構に及ぼす影響について、細胞実験、マウス実験、既存の公共データ解析などの手法を用いて検証を行った。その結果、ASCL1を発現する肺腺癌は特定のサイトカインやその受容体の発現レベルが低く、腫瘍免疫機構が抑制されているメカニズムの一端を明らかにすることができた。
本研究の成果により、肺癌においては特定のマスター転写因子の発現によってその腫瘍免疫機構に大きな差があることが明らかになった。現在の臨床の現場では免疫療法が盛んにおこなわれるようになっており、本研究の成果により、将来的には特定の遺伝子の検査により免疫療法の効果予測や適応の判定ができるようになる可能性があると考える。
すべて 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Cancer Lett
巻: 489 ページ: 121-132
10.1016/j.canlet.2020.06.002