研究課題
研究活動スタート支援
急性呼吸器感染症は小児において重要な疾患であり、発展途上国では小児死亡の主原因でもある。急性呼吸器感染症に関与する病原体の解明は、小児急性呼吸器感染症の診断や治療、予防に重要である。分子生物学的手法により、ヒト呼吸器臨床検体から多くのウイルスや細菌が高い感度で検出されるようになったが、それら病原体が有する臨床的意義の解明は十分ではない。フィリピンの小児出生コホートにおける定期的な呼吸器検体採取と分子生物学的検出手法の併用により、小児急性呼吸器感染症に関与する病原体の経時的かつ網羅的解析を目的として本研究を行う。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより感染症研究や公衆衛生対策は大きな制限を受けたため、本研究は当初の計画からの変更を余儀なくされた。過去の小児急性呼吸器感染症コホート研究で採取した上気道検体を用いて、RSウイルス量と臨床症状との関連性を解析した。また、インフルエンザA(IAV)H3N2亜型の分子生物学的解析を実施し、2014-2019年の間に複数のIAV H3N2株がフィリピン共和国ビリラン島に流入していたことを明らかにし、流入ウイルス株の島内での流行期間や関連するアミノ酸変異について明らかにした。さらに、ビリラン島で小児急性呼吸器感染症コホート研究を再開した。
急性呼吸器感染症は、途上国の小児死亡の主原因である。小児急性呼吸器感染症コホート研究を再開したことで、フィリピンにおける小児急性呼吸器感染症の原因をモニタリングし、流行株の把握および発病率や臨床症状の変化を解析することが可能となった。RSウイルスと臨床症状との関連性や、インフルエンザA H3N2亜型の流行様式を明らかにしたことで、リスク評価やモニタリング体制の最適化、ワクチン戦略に資することができた。RSウイルスやインフルエンザウイルスなどの呼吸器ウイルスは、小児のみならず高齢者でも健康被害をきたす。したがって、ウイルス別の流行特性を解明することは公衆衛生対策上の意義が大きいと考えられる。
すべて 2023 2019 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)
The Lancet Child & Adolescent Health
巻: 3 号: 11 ページ: 751-752
10.1016/s2352-4642(19)30278-0