研究課題/領域番号 |
19K24693
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(帰国発展研究)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
野崎 千尋 早稲田大学, 理工学術院, 准教授(任期付) (10867295)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
55,900千円 (直接経費: 43,000千円、間接経費: 12,900千円)
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キーワード | カンナビノイド / CB2受容体欠損マウス / 高脂肪食 / 末梢神経障害 / ケモカイン受容体 / 自然免疫応答 / 内因性カンナビノイド / CB2受容体 / 肥満 / 慢性炎症 |
研究実績の概要 |
カンナビノイドCB2受容体は、Gi/o型GPCRであること、またほぼ全て免疫細胞上に高発現していることから、免疫抑制的に機能すると考えられている。実際にCB2受容体欠損マウスに末梢神経障害を誘導すると著明な疼痛反応の上昇および神経炎症の増悪が認められるため、特に神経炎症に寄与する免疫系を抑制すると考えられて来た。 しかし我々は高脂肪食誘発全身性炎症に対して、CB2受容体欠損マウスが耐性を持つこと、すなわちむしろCB2受容体を有する野生型マウスでこそ高脂肪食有月全身性炎症が増悪することを見出した。また本モデルにおいてCXCR4やCCR2といった炎症性単球の遊走に寄与するケモカイン受容体の発現が増加すること、一方でCB2受容体が欠損していることでこれらのケモカイン受容体の発現上昇が抑制されることを発見した。 これはすなわちCB2受容体が病態によって炎症応答に対し全く逆の作用を及ぼす可能性を示したものである。これを「CB2受容体の2面性」と題し、何がこの2面性を決定するのか、CB2受容体が「ある」ときと「無い」ときのメリット・デメリットは各々何なのか、ひいては「ほぼ全ての免疫細胞に高発現しているカンナビノイドCB2受容体」が一体免疫機能に対してどういった役割を有しているのかを解明することが、本研究の最大の目的である。 今年度はフローサイトメトリーを用いた免疫細胞解析によって、高脂肪食暴露が野生型マウスの免疫細胞populationを大きく変動させること、またCB2受容体の欠損によりその変動が著明に抑制されることを発見した。現在はこれらの結果をまとめて論文化する準備を行うと同時に、細胞分化への影響があると見て次なる実験を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの実験の再現性確認に加えて、フローサイトメトリーにて高脂肪食暴露後の野生型およびCB2欠損マウスのcell populationに明らかな差異を見出すことができたため、この結果を持って論文投稿準備に入ることができた。 加えてフローサイトメトリーを用いた坐骨神経組織のCXCR4あるいはCCR2陽性細胞の解析方法を、既知の方法に加えて新たな方法を試行し、坐骨神経組織を下処理することで数は少ないもののある程度の細胞数を取ることに成功した。同様の手法で後根神経節および脊髄の組織も処理し、解析まで持っていくことができたため、今後は高脂肪食暴露マウスの組織サンプルを用いた解析を進める予定である。 また組織だけではなく細胞レベルにおける解析、特に分化解析が必要であることが実験結果より示唆されたため、その準備として骨髄細胞の分取およびサンプル凍結も進めた。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り高脂肪食暴露した野生型およびCB2欠損マウスの骨髄細胞を用いた分化解析実験を行うことを目指す。特に脂肪細胞になる間葉系幹細胞に着目し、骨髄内の幹細胞がCB2の有無によってどういった挙動を示すかを掘り下げたいと考えている。CB2受容体の造血幹細胞・間葉系幹細胞に対する影響はほとんど研究されていないため是非解明したい。 また現在CB2欠損動物だけではなく他の内因性カンナビノイド欠損マウスの作出・繁殖も進めており、これらを用いることで例えばリガンドが不足する場合、あるいはカンナビノイドシグナリングが完全に無くなる場合にどういった挙動を示すかを明らかにしたいと考えている。
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