研究課題/領域番号 |
19KK0019
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館 (2021-2022) 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 (2019-2020) |
研究代表者 |
河野 一隆 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部, 部長 (10416555)
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研究分担者 |
藤田 晴啓 新潟国際情報大学, 経営情報学部, 教授 (40366513)
山本 亮 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 研究員 (30770193)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2020年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2019年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
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キーワード | 装飾古墳・装飾墓 / 南スマトラ・パセマ高原 / 国立考古学研究センター(ARKENAS) / デジタルアーカイブ / 洞窟壁画 / 先史壁画 / 国際洞窟壁画センター(ラスコーⅣ) / 考古学 / 装飾古墳 / インドネシア先史文化 / GPS / 比較考古学 / 先史絵画 / デジタル・アーカイブ / 3Dスキャニング / MRデータ / 公開活用 / 装飾墓 |
研究開始時の研究の概要 |
日本ではあまり知られておらず、消滅の危機に瀕しているインドネシア・南スマトラに所在する装飾古墳を対象にインドネシア考古学研究センターと考古学的な基礎研究と、保存と活用を目的とした応用研究を推進する。出土遺物の形式学的組列を組んで暦年代を与え、高精度・高精細の計測にもとづく遺構の3Dデジタルアーカイブを構築する。国際的な先進事例と比較研究し、原始壁画の保存と活用を両立するモデルを国際的に発信する。
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研究実績の概要 |
本研究は、インドネシア・南スマトラのパセマ高原に所在する装飾古墳のアーカイブ化を基軸として、両立することが困難な先史壁画の保存と活用を推進する国際共同研究を実践的に展開する。昨年度までは世界的なパンデミックの影響が色濃く、海外調査が十分にできなかった。しかし、今年度は海外渡航自粛が部分的に緩和され、かつ国際情勢の見通しが不透明になる前に当初から計画していたフランス・ドルドーニュ渓谷に所在する洞窟壁画の公開活用について調査することを最優先に現地調査を実施した。加えて、フランス・トゥール在住の先史学者と共に日本考古学ワークショップを開催し、インドネシアで展開した先史壁画研究の地平を共有するとともに、学術交流も行うことができた。渡航先でPCR検査を受けねばならない等の制約はあったにしても、大きな支障なく調査を遂行することができた。 フランス・ドルドーニュ渓谷には、ラスコー洞窟をはじめ彩色壁画を有する世界遺産が点在する。これらは、開口後、十分な保存体制が取られなかったため、環境変化や生物被害によって当時の美が失われてしまった。このため、洞窟壁画の保存と活用の問題にいち早く直面し、先進的な取組を行っている点で世界的に注目されている。特に本課題と関連した最重要な訪問先が、国際洞窟壁画センター(ラスコーⅣ)である。今年度はラスコーⅣでの先史壁画の活用実態の調査を基軸に今までインドネシアで進めてきた先史壁画研究の成果の一端を日本考古学ワークショップの中で紹介し、意見交換を行った。また、先史壁画と造形的に密接に関連する日本考古学の埴輪についても、渡航制限中からの調査を継続して行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、装飾古墳・装飾墓など、世界宗教が普及する以前の先史壁画を人類史的に捉えるため、その展開過程で最も重要であるインドネシア・南スマトラの装飾古墳のデジタルアーカイブを行い、その歴史的な位置付けと共に両立が困難な壁画遺産の保存と活用について実践的研究を推進することである。その成果の一部は、インドネシア国立考古学研究センター(現国立革新研究庁考古研究センター)のトリウルジャニ(Triwurjani)氏と共に、2022年5月25~29日にYouTube上で開催された学会で発表し、2022年11月に事務局へ論文を提出した(現在、査読中)。また、フランス滞在中に先史学者であるロラン(Laurent Nespoulous)氏(東洋言語文化大学准教授、フランス東亜研究院、パリ第1大学考古学研究所)のご協力を得て、日本考古学ワークショップ(研究班の河野・藤田・山本、協力者ロラン氏に加え、寺前直人専修大学教授)を8月18日にトゥールで開催した。また、藤田を中心として、ロラン氏を介してヨーロッパのドルメンや支石墓などの装飾壁画研究の第1人者である、スペイン・マドリッドのアルカラ大学のラミレス(Bueno-Ramirez)氏と交流し、本研究で推進しているデジタルアーカイブの手法によって、ヨーロッパの先史壁画についての共同研究のための方策を探ることができた。また、2023年2月13日にインドネシア国立革新研究庁考古研究センターを藤田が訪問し、同センター長以下研究スタッフとZoomオンラインハイブリッド会議を開催した。インドネシア側からは次のフェーズの国際共同研究として、南スラウェシのロコマリリンサイトに存在する先史手形壁画研究への、画像処理、CycleGANs等の先進技術の応用共同研究が要請された。 来年度はヨーロッパの調査を中心とするほか、今年度から進めている研究報告書を作成し、成果を広く公開・共有に努める。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、アルカラ大学のラミレス氏から紹介されたスペイン北西部に所在するドンバテ(Dombate)ドルメン(支石墓)の先史壁画調査を実施する。築造は紀元前3千年紀に遡り、遺跡が所在するガリシア地方で「巨石芸術の大聖堂」とうたわれ、古くから芸術家や歴史家の注目の的であった。7つの立石を天井石で覆う多角形墓室の構造をとるが、立石の下半には彩色による幾何学図文が施され、上半には彫刻文様が刻まれる。現地は、遺跡として本格整備が行われ、木製ドームで遺跡地内が覆われ、研究センターが隣接している。本研究で推進してきた、日本やインドネシアの保存・活用事例を紹介するだけでなく、彩色と彫刻の異なる施文技法による図文について、当研究チームで開発してきた画像解析手法を援用した方法論によって、今まで看過されてきた情報を新たに取得し、先史壁画を基軸とした研究交流を推進する。また、2023年になってインドネシアの考古研究センターから依頼された南スラウェシのロコマリリンサイトの画像解析を積極的に進め、先史手形壁画研究について共同での調査研究を発展させる。 調査期間は年度末に近い頃に設定されるが、極力報告書に盛り込んで、成果の共有と発信を着実に積み重ねていきたい。
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