研究課題/領域番号 |
19KK0025
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分4:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
藤倉 良 法政大学, 人間環境学部, 教授 (10274482)
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研究分担者 |
佐々木 大輔 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (30784889)
石渡 幹夫 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 客員教授 (30831664)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2020年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | マーシャル諸島 / 移民 / 気候変動 / 経済格差 / 移住モデル / 社会的義務 / 海面上昇 / 小島嶼国 / マーシャル諸島共和国 / パンデミック |
研究開始時の研究の概要 |
気候変動に伴う海面上昇や異常気象によって国土の大半が居住不能になるリスクが大きいマーシャル諸島共和国の人々が、その影響をどのように認識し、どの時点で国外へ移住を決断するかを明らかにする。まず、同地の大学生と住民を対象とした予備調査と本調査を実施する。次に、気候変動が社会全体に及ぼした影響が地域に及び、さらに個々の家庭の移動に関する判断に影響するモデルを構築する。これをニューラルネットワークにより数値モデル化する。そして、アンケート調査から構造方程式モデルを構築し、住民がどう移転を決断するか、移転に消極的な住民を移転に向かわせるにはどうすれば良いのかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
マーシャル諸島のマジュロ市民対象に、移住を行おうとする要因を明らかにするために、質問紙によるアンケート調査を実施した。調査票は2019年度に東京でマーシャル諸島と米国の研究協力者を招いて英文で作成したものをマーシャル語に翻訳したものを用いた。調査はマーシャル人調査員が2021年度にランダムサンプリング方式で行い、308サンプルを得た。 移住の動機を示すアンケート項目の結果を独立変数として、相関係数が有意に高い因子を抽出したところ、先行研究と同様に、経済的理由、家族との再統合、医療が移住の動機となっていたが、家族や地域コミュニティで課される義務の多さも強い動機として認識されていることを初めて明らかにした。さらに、これと並行して、Permutation Feature Importanceを用いて、移住の動機となる顕著な要因を抽出しても、同様の結果が得られた。 これらから家族や地域コミュニティにおける義務から逃れたいという気持ちが海外移住のプッシュ要因として優位にあり、米国と自国との経済格差がプル要因として優位にあることが示された。このプッシュ・プル・モデル仮説の有意性はStructural Equation Modelingで0.1%の有意水準で検証された。すなわち、マジュロ市民の移住の動機は経済とならんで、地域の社会状況が強く働いているが、気候変動や海面上昇は強い動機とはなっていないと結論づけられたのである。 COP27 で採択されたシャルム・エルシェイク計画では、移住がロス・アンド・ダメッジの考慮事項に含まれている。しかし、気候変動は必ずしも移住を決定する際の支配的な要因ではない。社会状況を十分に調査しないまま、国際的な資金を移住の発生を減らすためのプロジェクトに投入しても、期待したほどの効果が得られないこともあることが十分予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年に東京でワークショップを開催して以降は、パンデミック拡大とマーシャル諸島共和国の厳しい入国制限のため、現地を訪問しての調査が行えなかったが、現地の研究協力者とオンラインで打ち合わせるなどして、アンケート調査の実施と解析はほぼ予定通り行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
アンケート調査の結果、移住の意思を有する人数と有さない人数がほぼ半分に分かれた。環境悪化にもかかわらず、移住の意思を有さない人が、将来について、どのような対応を考えているのかを分析したい。
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