研究課題/領域番号 |
19KK0077
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 長崎総合科学大学 |
研究代表者 |
大山 健 長崎総合科学大学, 工学研究科, 教授 (10749047)
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研究分担者 |
郡司 卓 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (10451832)
権業 慎也 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (10834377)
佐甲 博之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (40282298)
関畑 大貴 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (70844794)
山口 頼人 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (40613500)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2021年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2020年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2019年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | 高エネルギー原子核衝突 / ダイバリオン / ハイペロン / ストレンジネス / LHC / ALICE / J-PARC / FAIR / 高エネルギー重イオン衝突 / 重イオン衝突 |
研究開始時の研究の概要 |
高エネルギー重イオン衝突では沢山のストレンジ・クォークがつくられる。CERN-LHCのALICE実験では、従来の100倍の衝突データ収集速度を目指して、現在大幅な機能強化を遂行中である。これにより、統計不足に泣かされてきたダイバリオン探索、ハイペロン(Y)-核子相関、Y-Y相関、深束縛K中間子原子核やK中間子陽子凝縮物質探索など、ストレンジネスを用いた原子核物理を新たに展開可能となる。本研究では、ALICE実験を舞台に国際共同研究を発展させ、高エネルギー重イオン衝突によるストレンジネス核物理を新規開拓し、将来計画であるFAIR-CBM実験やJ-PARC重イオン計画へ向けた研究基盤を構築する。
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研究実績の概要 |
本研究では国際協力の元LHC-ALICEの高度化を完成させ、これまで統計不足により不可能だったダイバリオン探索、ハイペロン-核子やハイペロン-ハイペロン相関測定、深束縛K中間子原子核やK中間子陽子凝縮物質の探索といったストレンジネスを用いた核物理を新たに展開し、同時にFAIR CBMやJ-PARC重イオン将来計画へ向けた国際共同研究の基盤を構築する。 2022年は、大山・関畑・郡司がこれまで進めてきたALICE実験の高度化作業を完了し、ジュネーブ・CERNにおけるデータ収集を本格的に開始した。特に関畑はALICE実験ランマネージャとして1ヶ月間実験の統括を担った。一方、佐甲はJ-PARCにおける重イオン実験計画の実現に向けた議論を進めるとともに、先駆実験である陽子・原子核実験における電子対測定及びハドロン測定の準備、特にK中間子識別検出器の開発とビーム試験を進めた。 ALICEのデータ解析においては、ALICEオンライン・オフライン解析フレームワーク(O2)の開発に本格参加するために、関畑がCERNに滞在し、検出器上での光子電子対転換再構成のための解析コードを開発した。山口はフランクフルト大学 B. Doenigus 研究員と研究協力体制を確立し、2月には指導学生と共にフランクフルト大に滞在し、集中的にダイバリオン探索の解析作業を進めた。機械学習によるハイペロン再構成における純度、効率の改善にも取り組んだ。 山口・大山を中心に、8月に研究会「エキゾチックハドロン研究会」を長崎において主催し、ALICE、STAR、J-PARC、CBMのハドロン実験研究者、さらにExHIC Collaboration、HAL QCD Collaborationなどからの理論研究者らも招き、活発な議論と意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年まで新型コロナウィルスの影響で海外連携、特にGSI FAIRとの研究協力事業の開始の議論がスムーズに出来なかったため、計画全体が遅れていた。2022年に入り若干解消してきたとはいえ、渡航費の高騰などもあり海外渡航を伴う計画は一定量縮小せざるをえない状況が続いた。ただし、多くの議論はオンラインにて実施し、作業も現地の研究者と協調し、日本からリモート作業による最大限のサポートを行いつつ進めたため、研究計画全体の遅れは最小限に留まったといえる。また、2022年後半は状況がさらに改善したため、山口らのフランクフルトにおける集中的な解析、大山・郡司・関畑らのCERN渡航による実験実施も実現し、当初の遅れはほぼ取り戻しつつあり、研究期間延長後の最終年度となる次年度は当初の目的をじゅうぶんに達成できるとみている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は引き続き高度化したALICE実験TPCによるデータ収集、およびデータの解析を最重要項目と位置づけて活動を続ける。同時にFAIR CBM実験計画をも含めた高エネルギー重イオン衝突実験によるハイペロン物理のための国際共同研究基盤の確立に向けた人的交流と準備を進める。 大山・郡司・山口・関畑らは引き続き必要に応じてCERNに滞在しALICEの運転作業、検出器のメンテナンスを行う。 GSI FAIR関連に関しては、大山・山口らがドイツGSI研究所を訪問し、海外共同研究者代表らと将来計画に関する意見交流を行う。特に、今後の日本グループのCBM参加を視野に入れた国際共同研究の進め方と、ハイペロン物理の国際研究グループ構築に関して実務的協議を進める。 解析においては、山口・郡司らは過去のALICEデータの解析を引き続き行い、ハイペロンを高信号対雑音比かつ高検出効率で検出するために検出器シミュレーション等も用いて解析手法の最適化を進める。同時に鉛-鉛衝突データを含めたLHC-Run2全統計の実データ解析を並行して行う。さらに、現在取得しつつあるALICEのLHC-Run3データが利用可能となってきたので、こちらの解析にもとりかかる。 本研究課題の締めくくりとして国際研究会を主催し、海外研究者らを日本に招いて重イオン衝突におけるエキゾチック探索の最新のデータと将来計画に関して議論を行う。
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