研究課題/領域番号 |
19KK0081
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分16:天文学およびその関連分野
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
本間 希樹 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 教授 (20332166)
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研究分担者 |
笹田 真人 広島大学, 宇宙科学センター, 特任助教 (10725352)
池田 思朗 統計数理研究所, 数理・推論研究系, 教授 (30336101)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2020年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2019年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 巨大ブラックホール / 超長基線電波干渉計 / 動画解析 / 超長電波基線電波干渉計 |
研究開始時の研究の概要 |
人類史上初めて巨大ブラックホールの影を静止画で捉えたEHT(Event Horizon Telescope)による観測的研究を発展させ、さらなる観測データの蓄積と画像解析方法の向上により画像に時間軸を導入した動画撮影を目指す。それによって、ブラックホール周辺で起こるガスの運動やジェットの放出現象などさまざまな物理現象の時間変動を捉え、ブラックホールおよびその周辺の動的な姿を明らかにする。
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研究実績の概要 |
2022年度は本研究の最重要研究対象の一つである、天の川銀河の巨大ブラックホール・いて座A*について、EHTの観測の最初の成果をまとめて出版した。主たる結果は静止画像であり、光子リングとブラックホールシャドーを検出して、当該天体がブラックホールであることの視覚的な証拠をとらえることに成功した。この結果は2022年5月に国際共同記者発表によって世界に配信され、多くのメディアで取り上げられるなど、広く一般にも浸透した。 この解析にあたっては、動画化の可能性についても検討し、その解析状況についても一部論文に記載している。ただし、現在のデータでは情報不足のために動画解を一意に定めることが難しいと判明しており、確実な動画解の提供には至っていない。そのため、動画化に変わる新たなアプローチとして、時間変動する成分を平均画像に対する雑音的変動として扱うNoise Modelingという手法を導入し、動的な成分の静止画への影響を評価して、それを静止画撮影にフィードバックしている。この中で、時間変動成分を含む種々の情報をシミュレーション結果と比較した結果、比較的降着率が大きくジェットが出やすいモデルを示唆することがわかった。実際のいて座A*ではジェットが見えていないため、この原因の解明が次の興味深い対象であり、動画化を目指す中で新たな科学的知見が得られた。 一方、M87については、EHTの2018年度のデータ解析を進めた。すでに画像を得て2017年の結果との比較を進めており、現在論文としてまとめつつある。また、M87については、東アジアVLBI(EAVN)などの長期モニター観測から、ジェットの時間変動研究も進めている。それによって、ジェット軸の準周期的(10年程度)な時間変動を検出することに成功し、シミュレーションとの比較に基づいてその解釈を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成果集約面では、いて座A*の画像が発表されて大きなニュースになっており、また、動画化そのものは実現していないものの、動的成分に関する評価が新たな科学知見を生み出すなど、手法面および科学面で十分高いレベルでの進捗があった。さらに、M87についてはEHTによる2017年と2018年の画像比較やEAVNによるジェットの長期モニター観測により、時間変動の解析が実現しており、次年度以降の成果のとりまとめが予定されている。また、2022年度もEHTのキャンペーン観測やEAVNのフォローアップ観測が順調に実施されており、今後の詳しい解析に向けたデータの蓄積も進んでいる。これらの状況から進捗状況はおおむね順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
いて座A*の動画可に向けたシミュレーションを継続し、現在の観測局配置での限界と今後必要となる追加局の数や場所などについても検討を進めるとともに、EHTやEAVNなどの実データに基づく動画解析を進める。また、今後のEHT観測の鍵となるALMAの観測参加機会を増やすことを目指して、ALMAのTotal Power Array活用の可能性有無についても関係者と検討を開始する予定である。さらに、M87のジェットの動画撮影とそれに基づくブラックホール研究についても推進し、特にジェット軸の準周期的歳差運動の解釈について結果をとりまとめる予定である。
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