研究課題/領域番号 |
19KK0084
|
研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
熊谷 博之 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (10343758)
|
研究分担者 |
堀田 耕平 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 助教 (20819122)
大倉 敬宏 京都大学, 理学研究科, 教授 (40233077)
楠本 成寿 京都大学, 理学研究科, 教授 (50338761)
大場 武 東海大学, 理学部, 教授 (60203915)
市原 寛 名古屋大学, 環境学研究科, 講師 (90553074)
|
研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2020年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2019年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
|
キーワード | 噴火 / マグマ / 地震波散乱 / 火山ガス / 比抵抗 / 重力 / 地殻変動 / 火山監視 / 多項目観測 |
研究開始時の研究の概要 |
噴火に至るマグマシステムの発達過程を、次の噴火が迫っているフィリピン・タール火山を対象に地震学・電磁気学・火山化学・測地学的手法を用いて解明する。これまでの研究により、この火山では脱ガスを起こしているマグマが浅部に存在することが推定されている。本研究では、この変動源の直上において地震および電磁気観測を強化するとともに、面的な重力測定を行う。これにより、散乱・速度・比抵抗・密度構造を詳細に調べ、マグマの状態とその時間変動を解明する。さらにそれらの結果を火山ガスの測定結果や圧力源の推定結果等と比較することにより、火口で活発に起こっている噴気活動と関連性を調べる。
|
研究実績の概要 |
本研究では2020年にフィリピンのタール火山で起こった噴火に伴い、同火山における地震波伝播構造・電磁気構造・重力・地殻変動・流体組成にどのような変化が起こっていたかを解明することを目的としている。 タール火山で噴火前から発生した火山構造性地震の散乱波を用いて、火山島東斜面において浅部マグマが存在すると推定されていた領域における平均自由行程と非弾性減衰の時間変動の推定を行った。この解析においては、散乱波の継続時間を表すエンベロープ幅に加えて、S波の到着時刻とエンベロープ振幅が最大となる時刻との差であるピークディレイタイムを用いて逆問題解析を行った。その結果、噴火の数カ月前からこれらの推定値が系統的な変化を示すとともに、P波の走時変化やCO2ガスの放出量と相関を示すことが分かった。その結果から、同領域において噴火前に均質度が上がるとともに、非弾性減衰が強くなることが示された。これは噴火直前にマグマの粘性が増加したことを示唆しており、2020年の噴火が爆発的な噴火から始まったことと整合している。 タール火山島における噴火前の重力値の測定データからブーゲー異常を求めた。その結果、火山島は高重力カルデラ内に存在しており、火口湖の地下にも高密度体が存在する複雑な構造をしていることが分かった。 噴火によって被害を受けた観測点の復旧がカウンターパートによって行われた。それらの観測から、噴火前に活発に起こっていた火山構造性地震が火口がある火山島周辺では観測されなくなり、噴火前には発生していなかった微動が観測されるようになった。また噴火前には検出されていなかったSO2の大量放出(数千トン/日)が火口から起こっていることが観測されている。このことは、噴火によりマグマシステムが開放的になる変化が起こり、マグマから大量のガス放出が非爆発的かつ継続的に起こっていることを示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究が始まった直後の2020年度から昨年度まで、コロナ禍により日本からフィリピンへの出張が大きく制限されていた。さらに2020年1月に起こったタール火山の大規模な噴火により、火口がある火山島は大量の火山灰に覆われれて入山が規制された。その後も大量の火山ガスを放出する噴火活動が継続的に続いていたため、火口のある火山島へ入山が困難であった。これらの影響により、本研究で予定した地震・測地・重力・電磁気の現地での観測や、火口における湖水やガスの採取が行えず、新たなデータの取得が十分に出来なかった。さらにカウンターパート機関であるPHIVOLCSもコロナ禍のために活動が大きく制約されていたため、十分な共同研究活動を行うことが出来なかった。このような制約のために、これまで取得されたデータを用いた解析を進めてきたが、計画に比べて研究の進捗は遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
フィリピンへの出張を全面的に再開し、噴火前後に取得された地震・ガス・地殻変動等の解析を進めるとともに、タール火山における現地調査を行う。ただし火口のある火山島は2020年の噴火による火山灰等の堆積とSO2ガスの放出により入山できない領域もあるため、カウンターパートと協議の上で可能な範囲で電磁気および重力調査を進める。これらの観測データを用いて、地震波散乱・非弾性特性に加えて、トモグラフィーを用いた地震波速度構造とその時間変化の推定、微動の震源推定、火山ガスの放出量、火口湖水の組成変化、GPSおよびInSARにより火山島およびその周辺での地殻変動を調べ、噴火に伴うマグマ溜まりおよび火道におけるマグマの挙動と噴火によって生じたマグマシステムの変化を解明する。
|