研究課題
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
世界の中央海嶺が生み出す海洋地殻は多様な構造を示す.従来,この多様性は場所ごとの違い=空間変動として捉えられてきたが,最近では海洋地殻生産プロセスの時間変動が注目を集めている.本研究では,海洋地殻生産プロセスの時間変動は,それぞれ異なる要因に基づく異なる時間スケールの変動の重ね合わせであるとの仮説に立ち,3つの時間スケールの変動を海底観測によって捉え,変動の要因を考察し,マルチタイムスケール海洋地殻生産モデルを構築することを目的とする.そのため,モーリシャスの地球物理研究者と共同で中央インド洋海嶺中部における観測を実施し,両国の若手研究者の相互滞在を含め,共同で解析に取り組む.
全体の研究計画のうち,主観測としていたモーリシャス研究者との共同航海がCOVID-19の影響で中止となったため,2020年に実施された研究航海で取得されたデータ及び既存データを用いた解析を行った.また,若手研究者の派遣・招聘を行った.1)若手研究者の派遣:分担者である藤井がフランスIPGPに滞在し,仏側の協力者J.Dyment博士の元で共同研究を進めた.2020年に実施された航海で取得したインド洋における地形・磁気異常観測データに加え,仏側の所有する未公開データをあわせ,中央海嶺における火成活動の短期時間変動の解析を行った.その結果を共著論文としてまとめる準備も行った.2) 若手研究者の招聘:仏側協力者の元で研究を行っている博士課程学生1名を日本に招聘し,共同研究を行った.当該学生の開発した新しい磁気解析手法を日本側の観測データの解析に適用する形で,背弧拡大系における海洋地殻・リソスフェアの構造を明らかにし,拡大系の終焉がどのようなプロセスで起こるのかを議論した.その結果は国際誌に投稿し,現在査読中である.また,国内の中央海嶺研究者を集めたミニワークショップを東京大学大気海洋研究所にて開催し,相互の研究成果を交換することにより若手研究者間の交流をはかった.3) 既存データの解析:長期時間変動については,インド洋域の既存データの解析から白亜紀における海洋底史の一端を明らかにし,その結果を国際誌に発表した.
4: 遅れている
COVID-19の影響で,主たる観測が中止になったほか,当初計画していた若手研究者の派遣・招聘計画が大幅に遅れている.今年度はようやく渡航制限が緩和されたため,派遣・招聘を1件づつ実施することができ研究が進捗したが,当初計画を完遂するには至っていない.
COVID-19で中止となった研究航海の実施は本予算年度内には不可能であるが,若手研究者の派遣による既存データを利用した解析については,1年間の期間延長を行い,可能な限り進展させる予定である.
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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