研究課題/領域番号 |
19KK0133
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分31:原子力工学、地球資源工学、エネルギー学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
簡 梅芳 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (20533186)
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研究分担者 |
菅原 一輝 北九州市立大学, 国際環境工学部, 講師 (60792405)
久保田 健吾 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (80455807)
飯塚 淳 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (70451862)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2021年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2020年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
2019年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | レアメタル / ニッケル / 生物濃縮 / 合成生物学 / 微生物工学 / 金属濃縮 / 分子生物工学 / 資源回収 |
研究開始時の研究の概要 |
現代産業に必要不可欠なレアメタル等の金属資源を廃棄物・排水から効率的かつ経済的に回収する技術の開発に向け、申請者らは生物学的な金属回収に着目し、「合成生物学」というゲノムのデザイン・部分的操作を可能にする進化型分子生物工学手法を取り入れる。 本研究は、日本側研究者が把握する金属結合生物資源(遺伝子情報)と海外研究協力者らが有する“部分的に遺伝子操作を可能にする「合成生物学」の技術力”を融合することで、新規金属資源回収技術を確立すること、また環境資源工学分野における両国間の人材育成と新しい共同研究の基盤を形成することを図る。
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研究実績の概要 |
新型コロナウィルスによる感染症の流行状況により、本研究が計画した技術取得・技術移転のための研究代表者の簡と学生の台湾渡航は今年度もまだ実施できなかったが、日本国内にて既存の遺伝子工学手法による金属吸着微生物の構築を継続したとともに、金属応答性のある生物機能の探索を行ってきた。 レアメタルのニッケルを対象とし、ニッケルイオンに結合するタンパク質NikAとRcnRの遺伝子を大腸菌のゲノムから取得し、これらのタンパク質を細胞表面に発現する組換え酵母を作製した。NikAを発現する酵母は、ニッケルに特異的な吸着性を示し、1-1000ppmの濃度において吸着能を示したことがわかった。RcnRを発現した酵母は、NikA発現株と比べると同濃度でのニッケル吸着量が少ないものの、瞬間吸着量が大きいため、低濃度、短時間で吸着できる、両者それぞれの特徴を掴めた。その他、レアメタルのセレンを含有する環境試料から、セレン還元・回収できる微生物の集積培養および単離を開始し、セレン還元微生物の単離を成功している。 一方、半金属のヒ素に対する生物蓄積に寄与する生物間作用を共同研究先の台湾中央研究院と解析し、ヒ素の超蓄積植物モエジマシダの根圏に存在する代謝物Pterosinがヒ素の吸収に寄与する微生物のProteobacteriaを誘致していることを示唆した。また、同じく台湾中央研究院との共同研究として、以前もらった組換え枯草桿菌と酵母株を用いて、モエジマシダのバイオマスをエタノールに効率的に変換できる微生物の組み合わせを見出した。これらの研究成果は、合成生物学による物質転換は、今後資源循環にも大いに期待できることを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2019年末から新型コロナウィルスによる感染症が世界的に広がり始めたことにより、最初は台湾側が外国人に入国規制を強化し、そのため2020年度上半期に予定していた、日本から台湾への学生・研究人員の派遣ができなくなった。また、その後日本の外国人に対する入国制限・再入国制限が強化され、台湾側の共同研究者を日本に招聘するシンポジウムの開催も延期せざるを得なかった。 上記の理由により、当初予定していた各年度に行う台湾・日本間の人材交流およびこの交流により可能になる合成生物学技術の台湾から日本への技術転移ができなくなっている。そのため、本研究で計画していた金属吸着微生物の作製が遅れている。2020年度、2021年度共に数ヶ月間、実験補佐を雇用して、微生物の組換え実験を継続してきたが、まだ途中で、構築の成功まで達していない現状であった。台湾側の技術提供を要し、両国の人材交流を訴える本研究は、人材や生物試料の両国間の行き来なしには研究課題の遂行が困難と言わざるを得ない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、本研究を当初予定した期間より一年間延長し、2023年度には新型コロナウィルス感染症による諸規制は世界的に緩和傾向にあるため、状況に応じて、渡航が可能であれば、早く計画した研究を再開し研究進捗を取り戻す体制を整えたい。一方、3年が経過し、当初渡航を計画した代表者の簡や研究分担者の菅原はそれぞれ昇任し、長期間共同研究先に出向いて実験するのが難しくなる可能性が高い。そのため、簡が指導する学生の派遣を考える、または渡航の目処が立つまでは、日本において、技術補佐を雇用し、昨年度に引き続き金属吸着遺伝子の酵母への導入手法の検討を継続する。また、金属吸着微生物の構築に関しては、台湾中興大学生命科学研究科の協力研究者の黄先生の承諾を得て、日本から遺伝子情報およびデザインについて相談し、台湾にて遺伝子の合成または融合遺伝子の構築を協力する。出来上がった遺伝子構築を、代表者の簡または学生を派遣して取りに向かい、日本に持ち帰ってその後の性能評価を行う、との対応をも考える。 年度末には、日本または台湾にて国際シンポジウムの開催を企画し、本研究による成果を発信する。
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