研究課題/領域番号 |
19KK0136
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分32:物理化学、機能物性化学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 (2020-2022) 北海道大学 (2019) |
研究代表者 |
猪瀬 朋子 京都大学, 高等研究院, 特定助教 (10772296)
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研究分担者 |
小関 良卓 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80780634)
田中 啓文 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (90373191)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2020年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2019年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | グラフェン / グラフェンナノリボン / 探針増強ラマン散乱 / 分子表面修飾 / 化学的表面修飾 / 探針増強ラマン散乱(TERS) / 銀ナノワイヤー / 探針増強ラマン散乱法(TERS) / 表面分子修飾 |
研究開始時の研究の概要 |
グラフェンナノリボン (GNR) は、ダウンサイズの限界が近づく微細化の分野において、さらなる微細化の可能性を有する次世代微細配線材料である。GNRの実用化に向けては、その電子状態を再現よく精密に制御することが急務である。 本研究ではまず、化学的アンジップ法により得られた単層GNRに、GNRの自由電子に対して量子閉じ込めを引き起こす低分子量分子を共有結合させ、GNRの精密な電子状態制御を目指す。分子修飾後のGNRは、探針増強ラマン散乱法によりナノ領域での分子吸着と電子状態との関係を明らかにする。その後実際にGNRを電界効果トランジスタとしてデバイス化し、その性能評価を行い、実際の応用へ繋げる。
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研究実績の概要 |
本年度は、単層グラフェンシート上の任意位置へ高い空間分解能で分子を共有結合的に表面修飾する新たな方法を確立した。具体的には、アルキル鎖を有する短鎖脂肪酸水溶液中にグラフェンシートを浸漬し、488 nmの光照射を行うと、光照射箇所のみに選択的に短鎖脂肪酸に由来する分子を表面修飾可能なことを明らかにした。ラマン、赤外分光法による観察から、グラフェンシート表面上には、短鎖脂肪酸に由来するメチル基、メトキシ基、アセチル基が共有結合修飾されていることが明らかになった。また、アルキル鎖長の違いによりグラフェンシートへの電荷ドーピング効果を制御可能であることも確かめている。この新たな光誘起表面修飾手法は、グラフェンシート上でのサイト選択的な表面修飾をサブマイクロメートルスケールで制御可能であり、高い分解能で表面分子修飾を実現する手法として、本年度学術論文にも報告している。 本年度前半は、COVID-19の影響により引き続き海外出張が難しい状況が続いたが、プロジェクトメンバーとの打合せを定期的に行うことで円滑なプロジェクト遂行に努めた。年度後半には、ベルギールーバン大学・Steven De Feyter教授と、ワークショップ「The SPIRITS/LIMNI joint workshop Innovative materials and nanoscale analysis -to unravel complex molecular systems-」を、12/8-9の日程でベルギー・ルーバン大学にて主催することができた。ヨーロッパ、日本から、特にナノ材料やナノ分析を専門とする11名の研究者に招待講演を依頼し、研究者ネットワークを広げるとともに、本プロジェクトの今後の可能性についても議論を行った。本年度、プロジェクトに関連する論文を3本報告し、招待講演1件を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グラフェンシート上で光誘起による表面分子修飾方法を確立できたことで、グラフェンシート上での表面分子修飾箇所を容易に制御することが可能になった。本プロジェクト申請当初、グラフェンナノリボン上のサイト選択的な表面分子修飾を、修飾する分子の持つ電子状態の違いで制御することを検討していたが、光誘起による表面修飾方法が確立したことで、当初予定していた方法と比較して非常に簡便かつ、サブマイクロメートルスケールの高い空間分解能でサイト選択的な表面分子修飾が可能となった。この研究成果は、関連論文を加えて3本の学術論文として報告しており、概ね順調に研究プロジェクトを遂行している。 また、共同研究先であるルーバン大学でプロジェクトメンバーであるSteven De Feyter教授とワークショップを開催することができたことで、ルーバン大学の新たなメンバーとのネットワークを形成することができた。また、2019年度以来初めて対面での打合せが実現したことで、今後のプロジェクトの遂行方法を議論することができた。
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今後の研究の推進方策 |
グラフェンシート上に光誘起で分子修飾する新たな方法を確立できたため、これをグラフェンナノリボンへ応用し、同様の表面分子修飾を試みることで、グラフェンナノリボン上での効率的なサイト選択的表面分子修飾を実現する。実験の際は、ナノリボンエッジとそれ以外の部分で、分子修飾に必要となる条件が異なるのか等についても明らかにする。また、光誘起により修飾可能な分子の可能性を広げるため、分担者・東北大小関と打合せを行い、新たな分子設計を検討する。 これまでの分担者・九工大田中が開発した方法で作製したグラフェンナノリボンのTERS測定から、2種類のエッジ構造を有する中間体が生成されている可能性が示唆される結果が得られた。この試料についてTEM測定を行うことで、エッジ構造の詳細を明らかにする予定である。これにより、分担者・九工大田中開発のカーボンナノチューブの化学的アンジップ法によるグラフェンナノリボン生成反応過程についてより詳しい知見を得る。また、これまでは、超音波時間1時間で得られるグラフェンナノリボンのTERS測定、解析を主に行ってきたが、超音波時間1時間では、ナノリボンそれぞれの欠陥量の違いに大きな不均一性があることが明らかになっている。今後は、異なる超音波時間で得られたグラフェンナノリボンについても、欠陥量の不均一性を明らかにする予定である。
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