研究課題/領域番号 |
19KK0143
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分36:無機材料化学、エネルギー関連化学およびその関連分野
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
早瀬 修二 電気通信大学, i-パワードエネルギー・システム研究センター, 特任教授 (80336099)
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研究分担者 |
沈 青 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (50282926)
カマルディン ムハマドアクマル 電気通信大学, i-パワードエネルギー・システム研究センター, 特任研究員 (60853661)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2020年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2019年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
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キーワード | ペロブスカイト / 太陽電池 / Sn / 鉛フリー / 高効率 / パッシベーション / 欠陥 / 有機ケイ素 / インピーダンス / ワイドバンドギャップ / 電荷注入 |
研究開始時の研究の概要 |
本提案は鉛フリーSnペロブスカイトのキャリアダイナミックスを明らかにし、すでに高効率を発揮しているPbペロブスカイトとのキャリアダイナミックスと比較することにより、Snペロブスカイト太陽電池の効率向上を抑制している因子をあぶりだし、性能向上指針を提案する目的基礎研究である。光電変換層の電荷分離機構を電荷トラップ分布、時間分解スペクトル法、ホール測定法、熱刺激電流法を駆使して解析する。我々が不得意な非破壊キャリアダイナミックスに必須なインピーダンス解析はスペイン側が担当し、両者協力し太陽電池の電荷移動メカニズム(キャリアダイナミックス)を明らかにし、性能向上のためのボトルネックを明らかにする。
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研究実績の概要 |
鉛を含まないペロブスカイト太陽電池の高効率化が望まれている。錫系ペロブスカイトがその最も期待される候補であるが効率が低いという問題点があった。錫系ペロブスカイト太陽電池の効率を向上するためには結晶欠陥に起因する電荷再結合サイト密度を低下させる必要がある。これまで我々はヨウ素イオン欠陥(undercordinated Sn ion)密度を低下させるために、エチレンジアミンによるパッシベーションが有効であることを示してきた。今回表面撥水性を有するハロゲン化ケイ素(Me3Si-Br)で表面をパッシベーションしたところ、耐久性、効率が向上することを見出した。効率は表面パッシベーション後に10.05%から12.22%に向上した。耐久性は未封止、窒素下で保存したところ、パッシベーション前には40日で30%の効率低下があったが、パッシベーション後は92日間で20%の低下に抑えることができた。ヨウ素イオン欠陥にBrイオンが配位しMe3Siグループが界面、粒界に吸着することにより、ヨウ素イオン欠陥密度を低下させるとともに、粒界を疎水性化し水分の侵入を防止していると推定された。Ms3SiXのXはClイオン=Iイオン<Brイオンの順に効率が向上した。表面パッシベーションによりSn4+イオンの生成が抑制され、PL寿命が増大したという実験結果は、粒界に存在する結晶欠陥がMs3SiBrによりパッシベーションされ効率、耐久性が向上したという説明をサポートしている。ハロゲン化有機ケイ素化合物による粒界パッシベーションは耐久性向上、効率向上に有効であることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的はこれまで効率が低かった錫系ペロブスカイト太陽電池の効率向上、耐久性向上のための指針を提案することである。我々は結晶の格子欠陥が電荷再結合中心になり効率の低下を引き起こしていると考え、特に欠陥が多い粒界、ヘテロ界面を有機分子でパッシベーションすることにより格子欠陥を低減する方法を検討してきた。今回新しくハロゲン化有機ケイ素化合物が性能向上と耐久性向上をもたらすことを見出した。表面パッシベーションにより欠陥密度が減少し電荷寿命を長くしたこと、および効率低下をもたらしていたSn4+の生成を抑制できたことが効率向上の原因であることをスペインとの共同研究により明らかにした。効率向上、耐久性向上のための指針を得ることができ、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
鉛フリーペロブスカイト太陽電池である錫系ペロブスカイト太陽電池の性能向上のためには格子欠陥密度を低下させることが有効であることを表面パッシベーション法により実証してきた。今後は、この研究を続けさらに有効に粒界欠陥をパッシベーションできる分子構造の検討を続けるとともに、欠陥生成エネルギーが高く欠陥が生じない組成/界面、または欠陥が存在しても深い電荷トラップが生じない組成/界面を計算および実験により実証する組成エンジニアリングを同時に進める。
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