研究課題/領域番号 |
19KK0163
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分40:森林圏科学、水圏応用科学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上高原 浩 京都大学, 農学研究科, 教授 (10293911)
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研究分担者 |
吉岡 まり子 京都大学, 農学研究科, 准教授 (30220594)
杉村 和紀 京都大学, 農学研究科, 助教 (30711783)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2020年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | セルロース / ブロックコポリマー / 多糖 / オレフィンメタセシス / セルロースエステル / セルロースエーテル / デキストラン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では社会的要請が強い生分解性を有する天然物を原料とする機能性多糖系ブロックコポリマーの合成法を確立し、フィルム等としての物性、ガスの選択透過性などを評価し、これまで様々な用途で利用されている石油由来の難生分解性汎用ポリマーを代替する材料を開発することを目指す。具体的にはセルロースやデキストランのエチルエーテル誘導体をブロックポリマーの第一成分とし、第二成分としてオリゴ糖、多糖、オリゴペプチド、ポリアミノ酸、天然ゴム、ポリエステルや生分解性が期待できる合成ポリマーを想定し、ブロックコポリマー合成法として有用なオレフィンメタセシス反応を利用したブロックコポリマーの合成を行う。
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研究実績の概要 |
石油由来ポリマーを代替し得る生分解性の天然多糖をベースとする機能性材料の開発を目指し、オレフィンメタセシスを鍵反応とした多糖系ブロックコポリマーの合成とその物性評価について、共同研究先のアメリカ合衆国 VirginiaTech、Kevin J. Edgar教授とZoomによるオンライン会議ならびにメールを介したディスカッションを複数回行うとともに、日本側研究者(研究分担者の杉村和紀助教および当該研究テーマを担当する大学院生)の渡米と長期研究滞在を遂行した。 昨年度までに出発試料として選定したセルロースアセテートCA(工業的に重要な汎用エステル誘導体)と、エチルセルロースEC(濃厚溶液中でコレステリック液晶を形成するエーテル誘導体)について、オレフィンメタセシス反応に向けた末端機能化とブロック化反応を行った。具体的には、セロビオース誘導体をモデル化合物に用いて還元末端へのオレフィン含有基の導入とクロスメタセシス反応を行い、異種セロビオース誘導体の選択的連結を可能にする、オレフィン構造の組合せを明らかにした。さらに、セルロース誘導体-block-ビニルポリマー共重合体に関して、CAの末端ブロモ化と続くグルコシド化反応による還元末端へのオレフィン含有基の導入を行い、多糖鎖ブロックセグメントの調達ルートを検討し得た。 並行して、Virginia Tech訪問にて、医薬品・化粧品として利用されるデキストラン(α-1,6-グルカン)末端へのオレフィン含有基の導入、ならびにゲル化剤・増粘剤として利用されるカードラン(β-1,3-グルカン)の高メチル化と還元末端へのオレフィン含有基の導入に関する実験ノウハウを取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のため延期されていた、共同研究先(Virginia Tech)での長期研究滞在(杉村,5ヶ月;学生,2ヶ月)をようやく行うことができた。オレフィンメタセシス反応に適した置換基構造の選択、分子末端へのオレフィン含有基の導入、ならびに低分子モデル化合物(ブロック共重合体)の合成に成功している。また、デキストラン(α-1,6-グルカン)の末端機能化とカードラン(β-1,3-グルカン)のメチル化について検討を行い、水懸濁液中でのメチル化カードランの特異なゲル化挙動等、これまでに報告されていない新規データが得られつつある。その他にも、ブロック共重合体の構成セグメントであるECとアシル化ECから成る混合溶液の液晶形成挙動を調査し、EC液晶に関する基礎データの集積を行えている。 しかしながら、高分子量体のセルロース系ブロックコポリマーは合成できておらず、ブロックコポリマー試料の物性(液晶光学特性 etc.)に及ぼす異種ポリマー鎖の混在効果については未だ調査できていない。分子量増加に伴うクロスメタセシスの反応性の変化等にも注視して、種々の組成のブロックコポリマー試料を取り揃える必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
Zoomを使った遠隔会議ならびにメールを介したディスカッションを引き続いて開催し、多糖系ブロックコポリマーの合成と物性評価に関する実験スキームの検討と、進捗状況の共有を定期的に行う方針である。 セルロース系ブロックコポリマーについては、モデル化合物であるセロビオース(二糖)誘導体から高分子量体のセルロース誘導体へと変更し、オレフィンメタセシス反応によるブロック共重合体化を行う。得られたブロックコポリマー試料について、一次構造(分子構造)-高次構造(ゲル・液晶形成)-バルク物性(熱機械特性、生分解性、etc.)の相関を体系的に整理していく。 デキストラン系ブロックコポリマーならびにカードラン系ブロックコポリマーについては、薬物輸送システムDDSや生分解性・生体適合性ゲル材料への応用を目指して、分子設計による親/疎水性のミセル形成能・ゲル形成能の制御を試みる。導入するブロック鎖(第2成分)を選択するとともに、オレフィンメタセシスの反応条件について検討を進め、多糖鎖の結合様式(α(1→6)型 or β(1→3)型)が高次構造や材料物性に及ぼす影響について調査する。 また、再度日本側研究者の(短期)研究滞在を行い、実験スキームの詳細と得られた成果の纏め方について議論を進めていく予定である。
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