研究課題
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
本研究では、日本国内5名(代表者:竹田、分担者:内橋、谷、竹居、西上)と、海外共同研究者(Harvey McMahon、MRC分子生物学研究所)で構成する学際的かつ国際的な共同研究チームを組織し、ダイナミンによる膜切断機構の作動原理とBARドメイン蛋白質による制御機構、さらにダイナミンの機能破綻によって起こる難治性疾患の発症機序を、in vitro再構成系を用いた「ボトムアップ型」の構成生物学的なアプローチで解明する。
中心核ミオパチー(Centronuclear Myopathy: CNM)は、先天性ミオパチーの一つで、乳児期の発育の遅れ、近位筋優位の筋力低下、非進行性など、他の先天性ミオパチーと同様の臨床病態を示す。一方、骨格筋の筋病理は、中心核、T管形成不全、ミトコンドリアなどのオルガネラ分布異常、コスタメア構造異常、神経筋接合部の形成不全など多岐にわたる。しかし、どの病態が筋力低下を引き起こす主要因になっているかは明らかになっていない。ダイナミン2をコードするDNM2は、CNMの原因遺伝子として知られている。本研究では、DNM2変異によるCNMを対象とし、ダイナミン2の機能異常が、骨格筋病態を引き起こすメカニズムを、分子、細胞、個体のマルチスケールで解析した。これまでに、(1)in vitroおよび細胞内のT管様構造再構成系を用い、ダイナミン2の膜リモデリング機能を定量的に評価することに成功した。またこの解析系を用いて、(2)CNM変異型ダイナミン2では、膜切断に必要なGTPアーゼ活性が亢進していることを明らかにするとともに、(3)CNM患者の筋レポジトリーから同定された新規DNM2バリアントから、病因性バリアントを同定することに成功した。これらの成果については、原著論文2報(Fujise et al., JBC 2021;Fujise et al., Human Mutation 2021)と総説1報(Fujise et al., IJMS 2022)、著書1報(竹田、医学のあゆみ 2022)として発表した。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、イギリスへの渡航,海外共同研究者の日本への招聘など,予定していたイベントを行えなかったが、海外共同研究者とは定期的なオンラインミーティングを行い、チーム内で研究の進捗状況を共有できている。また国内において実施可能な研究計画についても一定の成果をあげることができている。さらに研究成果については、第75回日本細胞生物学会大会、第61回日本生物物理学会年会、第46回日本分子生物学会年会のシンポジウム等で発表し、論文の投稿準備も行なっている。
代表者(竹田)は研究統括および膜リモデリング分子の細胞生物学的解析を行うとともに、CNM変異型ダイナミン2によって膜リモデリング異常が誘導されるメカニズムを、クライオ電子顕微鏡や高速AFMを用いた構造生物学的なアプローチで明らかにする。さらにCNM変異をノックインした新たなモデルマウスを作成し、病態(表現型)解析を進めることにより、CNM患者で起こる骨格筋病態の主要因を明らかにする。また,海外共同研究者(McMahon博士)や分担者(竹居)が開発した膜リモデリングのin vitro再構成系を用い,電子顕微鏡による構造解析(竹居),高速AFMによる分子動態解析(内橋),蛍光偏光顕微鏡解析(谷),数理モデリング(西上)を行う。R6年度も,代表者(竹田)はMcMahon研究室に滞在し,疾患型ダイナミンのin vitro膜リモデリング解析を行う。万が一,イギリスへの渡航が困難な状況になった場合でも,国内のリソースを利用しながら構造解析や分子間相互作用解析などを進めるとともに,MRC分子生物学研究所の研究者とのネットワーキングをオンラインで積極的に行い,学術的・人的な基盤づくりを行う.
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すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (14件) (うち国際共著 6件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 10件) 学会発表 (32件) (うち国際学会 2件、 招待講演 22件) 備考 (2件)
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