研究課題/領域番号 |
19KK0185
|
研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分45:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
橋本 哲男 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50208451)
|
研究分担者 |
久米 慶太郎 筑波大学, 医学医療系, 助教 (70853191)
千葉 洋子 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 上級研究員 (70638981)
神川 龍馬 京都大学, 農学研究科, 准教授 (40627634)
|
研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2020年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2019年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
|
キーワード | ミトコンドリア関連オルガネラ(MRO) / プロテオミクス / フォルニカータ / 嫌気環境適応 / 機能進化 / ミトコンドリア関連オルガネラ |
研究開始時の研究の概要 |
フォルニカータ生物群はミトコンドリア(Mt)およびミトコンドリア関連オルガネラ(MRO)の進化・多様性の解明のために最適な研究対象である。本研究では、嫌気真核生物研究のトップを走るRoger教授の研究と我々のプロテオミクス研究を共同研究として発展させることにより、フォルニカータの進化史におけるMRO局在タンパク質の喪失と獲得の過程を明らかにする。その知見を生息環境や生活様式、生理動態などの違いとともに総合的に考察して、MRO機能の進化の原動力とメカニズムを理解する。さらに、フォルニカータ以外の真核生物も視野に入れた比較解析により、Mt/MROの縮退進化と嫌気適応進化のメカニズムの解明に迫る。
|
研究実績の概要 |
実験研究においては、MROの精製とプロテオミクス解析の対象とするフォルニカータ6生物種のうち、Retortamonas以外の生物種に関する解析を行った。解析が最も進んでいるKipferliaについては、R2年度に行ったiTRAQ法によるMROのプロテオミクス再解析について、R3年度に同定した62種の確実にMROに存在すると考えられるタンパク質も含めて、引き続き得られたデータを詳細に検討した。Dysnectesについては、R3年度に準備を行ったプロテオミクス解析用のサンプル(MROのマーカーとなるシャペロニンCPN60に特異的な抗CPN60ペプチド抗体を用いてKipferliaと同様な方法により20回の細胞分画実験を行ったもの)を用いた解析の準備が整っており、Dysnectesのゲノムおよびトランスクリプトームデータを精査したうえで構築したリファレンスデータベースの準備も完了している。 解析研究においては、R3年度に引き続きミトコンドリアおよびMRO関連タンパク質の一部についてホモログを探索し分子系統解析を行った。R3年度までの途中経過では、特に原核生物のタクソンサンプリングに関して不十分あるいは不適切である解析例がいくつか含まれていたため、ホモログを探索の際の検索パラメータや相同性検索結果に対するフィルタリングの条件を検討し、また、タクソンサンプリングの基準に関してより適切なものとなるようデータセットを繰り返し条件を変えて構築し適切なものが選択されるような条件の探索を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R4年度には、Kipferlia以外のプロテオミクス解析について、とくにDysnectesについてiTRAQ法によるプロテオミクス解析の準備を完了しており、R4年度にプロテオミクス解析自体を完全に完了させることはできなかったが、R5年度当初にプロテオミクスを実施できる状況にある。 プロテオミクス解析の基盤となるゲノムおよびトランスクリプトームデータの整備に関しては、Aduncisulcusについて、ゲノムデータだけではなくトランスクリプトームデータの情報も含め、マニュアルでのデータチェックも一部導入して、全ORFデータを精査しアノテーション作業を行った。これらのデータを公的データベースに登録し公開するとともに、成果論文を査読付き英字雑誌に投稿し受理・公表された。Kipferlia, Dysnectesについても同様の作業を完了しており、これらのデータを公表するべく公的データベースに登録中であり、論文投稿の準備も行っている。以上のことから、基盤データ整備に関してはおおむね順調に進んでいる。 分子系統解析に関しては、ミトコンドリア・MRO関連タンパク質のうち、主要な機能である嫌気的ATP合成、NADH再酸化、鉄・硫黄クラスター合成、水素生成、抗酸化に関与するタンパク質の解析について解析はほぼ完了しているが、原核生物からの不十分あるいは不適切なタクソンサンプリングを改善すべく、サンプリング方法の修正および評価を繰り返し行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
R4年度に引き続き、フォルニカータ生物6種を対象に、MROの機能の進化を推測するための基盤データの取得に関する実験研究とそれによるオリジナルデータを含めたデータ解析研究を進める。 とくにR5年度の実験研究においては、R2-R4年度にKipferliaを対象に確立することができたMROの生成とプロテオミクス解析に関する方法論を、他のフォルニカータ生物にも適用して他生物のMROプロテオームのデータを得る。橋本研・千葉研において、DysnectesのプロテオミクスデータがR5年度に取得できる予定である。また引き続きAduncisulcusに関しても同様の方法論を用いて解析を行う予定である。Roger研でも既に得られているCarpediemonas、Chilomastixに関する高品質なゲノム・トランスクリプトームデータをリファレンスとし、これらのMROのプロテオミクス解析に挑戦する。さらに、KipferliaおよびR5年度内にMROのプロテオームのデータを得る予定であるDysnectes, Aduncisulcusについて、MROタンパク質を3個程度選びそれらに対する抗体を作製し、間接蛍光抗体法によりそれらのタンパク質が確かにMROタンパク質であることを証明する実験を行う予定である。 R5年度も引き続き随時データの収集に努め、本課題におけるオリジナルデータと併せて分子進化学的解析が行える体制を維持していく。このようにして、今後、実験・データ解析の両面からミトコンドリア/MROの進化過程の全体像を明らかにし、嫌気環境適応によるミトコンドリア機能の縮退進化やMRO機能の進化にどのような多様性・普遍性があるかを探っていく。
|