研究課題/領域番号 |
19KK0190
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分45:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
熊澤 慶伯 名古屋市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (60221941)
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研究分担者 |
武藤 望生 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (50724267)
渋川 浩一 ふじのくに地球環境史ミュージアム, 学芸課, 教授 (30435739)
スティアマルガ デフィン 和歌山工業高等専門学校, 生物応用化学科, 准教授 (50625259)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2021年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2020年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2019年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | インドネシア / 生物地理学 / 魚類 / 系統分類 / ウォレス線 / 分子系統 / 淡水魚類 / 汽水魚類 / 沿岸魚類 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ワラセアと呼ばれる動物相の遷移帯を中心に、インドネシア島嶼域の淡水魚と汽水・沿岸魚を野外採集し、分類学的検討を行うとともに、最新の分子的アプローチを用いた系統・集団解析を行う。その結果に基づき、塩水中の分散特性が異なる魚類の種(集団)分布や系統地理構造を古環境学的背景と関連づけて理解し、生物地理区境界線との関わりを高精度に検証する。インドネシア島嶼域では、近年の環境破壊で生態系の持続性に深刻な懸念が持たれている。本研究は、生物地理学を格段に発展させるのみならず、東南アジア諸国で生物多様性の保全と生物資源の持続的利用を図るうえで必要な研究人材とそのネットワークを育てることに繋がる。
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研究実績の概要 |
2023年度は、新型コロナウイルス感染症の影響がようやく弱まり、現地でのサンプル採集が通常通り行えるようになった。前年度までの調査でインドネシア島嶼域の西部については主な採集地点からのサンプルを収集できていたが、今年度もいくつかの地点を追加して採集した。一方、インドネシア東部についてもサンプル収集を行おうとしたが、天候不順や現地協力者の不在などの要因で思ったようには進まなかった。この点は次年度の課題として残った。採集した標本の一部は、インドネシア政府の許可のもとに、研究代表者の研究室に提供され、国際共同研究体制のもとで系統分類学的研究を行なった。 ハゼ目オクスデルクス科ゴビオプテルス属では、ミトコンドリアDNAにコードされるシトクロムオキシダーゼサブユニットI(coxI)遺伝子の塩基配列を用いた解析により、10を超える種が存在する可能性が示唆された。従来の研究では、インドネシアに生息するゴビオプテルス属魚類が2種のみ知られていたが、我々の研究によって予想を超える多様な種がさまざまな環境のもとで分化して生息していることが示された。また、スズキ目ツバメコノシロ科ミナミコノシロ属の沿岸魚類について、coxI遺伝子を用いたDNA解析を行ったところ、大きく2群に分かれることが示されたが、それらは現行の分類と必ずしも整合しなかった。また、ジャワ海沿岸では両群の個体が同所的に生息している可能性も示され、その背景にある遺伝的・生態的メカニズムが何なのかという新たな疑問が生まれた。 本科研費研究課題の国際共同研究チームのメンバー間で研究成果を共有するために、zoomを利用した科学セミナーを12月に公開で実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までにサンプル採集で苦労したが、今年度は分子解析や形態解析に集中することができ、興味深い発見がいくつか得られつつある。今後は、それらを論文などで発表していくことに取り組みたい。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までにインドネシア島嶼域の西部からはサンプル収集が進んでいるが、東部からはあまりサンプルを集められていない。今後は、インドネシア東部の主な地点(マルク諸島、パプアニューギニア島、ティモール島、スラウェシ島など)からのサンプル採集もできる限り行いたい。さらにDNA解析では、coxI遺伝子の解析にとどまらず、核DNAを用いた解析法(MIG-Seq法など)も駆使して、信頼できる分子系統を示したい。形態情報についてもしっかり解析し、分類学的知見を明らかにしていきたい。これらの研究成果を取りまとめて学術雑誌に投稿するとともに、日本魚類学会等の発表機会で関連演題を発表することを目指していく。
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