研究課題/領域番号 |
19KK0191
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分45:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
松田 一希 中部大学, 創発学術院, 准教授 (90533480)
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研究分担者 |
豊田 有 中部大学, 創発学術院, 日本学術振興会特別研究員 (30838165)
香田 啓貴 京都大学, 霊長類研究所, 特定准教授 (70418763)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2021年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2019年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 霊長類 / 東南アジア / 性的二型 / 重層社会 / 犬歯 / 性選択 / 自然選択 / アジア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、アジア産の霊長類種を対象に、特殊化したオス形質発現に潜む、行動生態基盤や性認知、進化原理について、蓄積された長期生態観測と認知行動実験を融合して探索する。また、アジアを舞台とした、新しい国際拠点形成も目標とする。性淘汰原理の理解には、生態学や認知科学、数理モデルなど、領域横断的方法が不可欠である。これを契機として、既にアジア各国に調査基盤を構築している日濠の研究者網を拡充発展させ、アジア霊長類学会の発足とけん引を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、複雑な島嶼に適応放散したアジア産の霊長類種を対象に、特殊化したオス形質発現に潜む、行動生態基盤や性認知、進化原理について、蓄積された長期生態観測と認知行動実験を融合して探索している。特に、①霊長類ではオス形質の直接評価研究がほぼ皆無であり、認知実験を通じたメス選好性評価を世界に先駆けて検証、②オスの特殊化した形質(体重、犬歯、装飾など)の関係性(相関やトレードオフ)についての野外調査に基づいた定量化、③これらの知見に基づく性的二型の進化数理モデルの構築、といった3点の達成を目標に掲げて研究を行ってきた。
本年度は特に、顕著な性的二型と社会性の関係性を検証した。中でもテングザルで見られる性的二型は、重層的な社会性によるオス間競合の強さにより加速化された結果であることが今までの成果により示唆されてきたが、その重層社会の詳細は不明であった。そこで本年度は、今までの蓄積されたテングザルの行動データと個体間の血縁度といった遺伝的な情報を統合することで、その社会構造を明らかにした。複数のハーレム型の群れが縄張りを持たず、移動域を重複させ、強いオス間競合にもかかわらず一見すると平和的な重層性を維持できるのは、ハーレムの核オスや、その核オスになれずにオスグループとして暮らすオス同士の血縁度が比較的高いことと関係しているためだと考えられた。つまり、父兄的なコミュニティーを形成することで、潜在的なオス同士の強い競合を軽減し、直接的な攻撃交渉を避けて音声などによるコミュニケーションを発達させた結果として、テングザルの顕著な性的二型が進化したと結論づけた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの影響により、渡航できなかった期間を挽回すべく、海外でのフィールド調査を積極的に実施したが、やはり渡航できなかった期間を完全に取り戻すほどには研究は進展しなかったため、やや遅れている、という評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後はタイ王国で実施しているフィールド調査の成果や、認知実験の結果などを統合することで、より多くの種で性的二型の進化機構の解明を目指していく。また、博物館などの骨格標本の計測なども調査に組み込むことで、犬歯サイズと体重の関係性に加え、各霊長類種の持つ社会性がどのように影響しあって性的二型が進化するかを考察し、新型コロナウィルスによる研究の遅延を挽回していく。
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