研究課題/領域番号 |
19KK0196
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分47:薬学およびその関連分野
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
島岡 要 三重大学, 医学系研究科, 教授 (40281133)
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研究分担者 |
朴 恩正 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (20644587)
高娃 阿栄 三重大学, 医学系研究科, 助教 (50643805)
伊藤 亜紗実 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (80740448)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
18,200千円 (直接経費: 14,000千円、間接経費: 4,200千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2021年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2020年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2019年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | タイ薬用植物 / T細胞 / 細胞移動 / 抗菌 / 抗炎症 / エキソソーム / RNA干渉 / 新型コロナウイルス / 薬用植物 / 腸管免疫 / インテグリン / 炎症性サイトカイン / マイクロRNA / 細胞接着 |
研究開始時の研究の概要 |
植物由来マイクロRNAはエピジェネティックな制御性因子として細胞内で機能するだけでなく、エキソソームに乗って異種細胞にも伝搬し、種を超えた「トランス・キングダムRNA干渉」を誘導し、植物の生体恒常性維持に貢献しているが、ヒトへの効果は不明である.本研究では「薬用植物エキソソームに含まれるマイクロRNAが、抗炎症効果を発揮する重要成分である」という学術的な仮説を検証する.タマサート大学医学部Itharat准教授との国際共同研究により、薬用植物よりエキソソームを分離し、炎症性腸炎の治療標的分子の発現を抑制する効果をもつ植物マイクロRNAを同定する.
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研究実績の概要 |
タイ薬用植物から分泌さるエキソソームが含有するマイクロRNAが、トランスキングダム的なRNA干渉誘導作用をすることで、多彩な薬効を発揮する可能性を検証することが本研究の概要である。本研究で使われる植物に関しては、タイ・タマサート大学医学部タイ伝統医療応用研究センター長のItharat准教授との国際共同研究により、タマサート大学薬用植物園で栽培されている国外持ち出しが禁止された希少な薬用植物であるため、本研究を遂行するために、代表研究者らが直接タマサート大学に出向き実験を行い、植物エキソソームを分離し、様々な試験管内、細胞学、動物モデル実験を行うつもりであった。しかし、最近までコロナの影響でタマサート大学に訪問して研究することが出来なかった。この研究環境の中でも、本共同研究の開始時にタマサート大学から入手した植物抽出物を用いて細胞学実験を実施している。特に、この抽出物が免疫細胞で抗炎症機能を誘導するような実験結果を出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題で、2種類の植物抽出物(X-extract、Y-extract)の細胞学的な機能変化への効果を、免疫系の細胞株を用いて検討している。使用した免疫系の細胞株は、TK1とEL4で両細胞はT細胞である。サンプル(XとY)の作製の方法は、抽出する過程や使用する溶媒により異なる。特にエタノールは細胞に少なくとも毒性があるので、まず細胞に対するドーズ依存的な毒性を検討した後に細胞学的な実験を行った。その結果に基づき、細胞に20 マイクルグラム/mlのextractを3日間処理し細胞学的な実験手法を用いて下記の結果を得た。1)サイトカインの遺伝子発現:本研究で、植物extract を処理したTK1とEL4はインターロイキン-22(IL-22)の発現を増加することが確認された。一般的に、IL-22は、病原性細菌感染に反応して免疫細胞から生産されるサイトカインであり、腸管上皮細胞に作用する。つまり、腸管上皮の細胞膜で発現するその受容体(IL-22R)に結合し、抗菌や粘膜免疫に重要な防御能力の増強に関わると知られている。したがって、植物extractがT細胞のIL-22発現を促すというのは、細菌感染に対して、T細胞をして腸管上皮細胞の抗菌粘膜免疫を誘導させることが考えられる。2)T細胞移動制御:細胞に20 マイクルグラム/mlのextractを3日間処理し、Transwellアッセイを用いて細胞走化性を検討した。その結果、ケモカインSDF-1への移動する細胞の数的な割合というのは、植物extractを前処理したEL4 T細胞が、処理してないEL4 T細胞に比べて有意に減少された。この結果よりT細胞は植物extractを処理するとCXCR4の発現と機能の制御に関わり、SDF-1のようなケモカインに向けての細胞移動能力を抑止させる等により、抗炎症能力の誘導可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
国際共同研究を実施している代表研究者の島岡と分担研究者の朴は、2019年度まではタマサート大学出身の研究協力者の大学院生(Prajuabjinda、Inprasit、Worawattananutai)の研究指導を、2021年度以降はタマサート大学出身の2人のタイ留学生(Mokmued、Leangpanich)の研究指導を担当している。このように我々は、タマサート大学出身でタイ薬用植物の研究経験の持つ研究者らと国際共同研究を数年間行ってきているので、薬用植物の作用機序の解明における重要な人的ネットワークの構築を設けている。本研究課題においては、植物extractを用いての研究を遂行しその抗炎症・粘膜免疫の誘導効果を明らかにしていく。さらに、代表研究者と分担研究者が可能な範囲の中で現地に直接出向き研究を遂行し植物エキソソームを分離し炎症モデルの標的分子の発現の制御効果の持つマイクロRNA候補群を同定し、また、炎症性腸疾患のようなマウス炎症モデルに経口投与し同定されたマイクロRNAの抗炎症効果を検証することが今後の推進方策になる。
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